理想のグローバル・リーダー像

 グローバル企業やグローバル・リーダーについて、ありとあらゆる種類の議論が交わされてきたが、「グローバル」とは厳密には何を指すのだろう。

 この問いへのはっきりした答えはない。国境を越えて活動しているということか。それとも文化的な適応力を意味するのか。何カ国語も操れるマネジメント・チームを指すのだろうか。

 HBRは、CEO4人と国際的なエグゼクティブ・サーチ会社のトップ、すなわち、いわゆるグローバル企業のリーダーたちに、理想のグローバル・リーダー像について聞いた。

 彼らの見解には共通点があった。たとえば、ローカル市場からグローバル市場へという時代の流れを覆すことは不可能で、この流れはさらに勢いを増しているという点で意見の一致を見た。また大半が、グローバル能力の開発にシニア・マネジメントが果たす役割はきわめて大きいとも感じていた。

 しかし、海外勤務の重要性や社員が現地の文化にどれくらい順応すべきかなど、その他もろもろの点については見解が分かれた。以下に紹介する5人の論考は、企業同様、多種多様である。

重要なのは意欲と進取の精神と文化的相違を尊重する姿勢だ

スティーブン・グリーン(Stephen Green)
HSBCグループ CEO

 1982年に私がHSBCに入社した頃、HSBCはニューヨークのマリン・ミッドランド銀行の株式を51%保有していたとはいえ、本質的にはアジア企業だった。当時の社員数はおよそ3万人で、そのほとんどが英語と広東語を話していた。

 それがいまや世界中で約21万5000人の人々が働く、まったく別の企業へと変貌を遂げた。国連公用語6カ国語のうち、当行で話せる人材がいないのは1カ国語だけだ。