【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
ジェームズ・アラン・フォックス(James Alan Fox)ノースイースタン大学 リップマン・ファミリー記念講座 教授
スティーブ・カウファー(Steve Kaufer)職場内暴力研究所 共同創立者
クリスティーン・ピアソン(Christine Pearson)アメリカ国際経営大学院サンダーバード校 準教授
キム・スキルダム=レイド(Christine Porath)南カリフォルニア大学 マーシャル・スクール・オブ・ビジネス 助教授
ロナルド・スハウテン(Ronald Schouten)マサチューセッツ総合病院 法務部長兼精神医学サービス部長

[ケース・ライター]
アイリーン・ロッシュ(Eileen Roche)HBR アソシエート・エディター

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

奇妙で近寄り難い一人の同僚

「昨日の夜、ドラッグ・ストアでだれを見かけたと思う」と、ニコール・イアヌッチはみんなのほうに身を乗り出した。「マックスが処方薬カウンターに並んでいたのよ。何の薬か見えなかったけど、きっとノイローゼの薬よ。このところ様子が変だったもの」

「ニコール、やめろよ。かわいそうに。マックスの奴、どうせ風邪薬でも買いに行ったんだよ。それを精神病だと決めつけるなんて、怖い、怖い」とデレクがいなす。

「私がテレビ・ドラマの見過ぎだってことは、みんなが言っていることだけど──」。ニコールが小声になる。「でも正直、彼って気味悪いと思わない。前は単に変わった人というくらいだったけど、最近、特に先週の火曜日頃から態度がおかしくなってきている気がするの」

 火曜日の事件のことを知らない者はいなかった。シアトルのある会社の従業員がたまりにたまった不満をついに爆発させ、38口径の銃を両手に数人の同僚を射殺し、自殺を図ったのだ。