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信頼を失ったアメリカ金融市場を回復させるには
ほんの数年前まで、アメリカの株式市場は世界中から羨望の眼差しが向けられていた。新しいテクノロジー、有利な法規制、そして金融サービス業界のイノベーションなどのおかげで、いつでも、どこでも、だれでも取引できるようになった。
E*トレードのようなオンライン証券を利用すれば、個人投資家は家庭でもオフィスでもPCのキーを叩くだけで、数百ドル程度の株式ならば、少額もしくは無料の手数料で売買できる。
また、年金貯蓄優遇税制をはじめ、フィデリティ・インベストメンツなどが提供している退職後のライフプランを設計するツールのおかげもあって、一般人も簡単に投資の楽しさを味わえるようになった。
いまや、彼ら彼女らの参加は必須である。ザ・ストリート・ドットコムやCBSマーケット・ウォッチなどのウェブサイトは、年中無休の24時間体制でニュースを流し、株式投資に夢中な個人に最新情報を提供している。
数百万規模のアメリカ人がこれまで株式市場に殺到し、彼ら彼女らが投資すればするほど、株式の流動性は高まり、市場はより身近で魅力的なものになった。
しばらくの間、この好循環は驚くべき経済効果を生み出した。アメリカでは、新規銘柄を期待する声に後押しされ、新興企業のIPO(新規株式公開)は記録的な数字となり、急速な発展を遂げた。
この恩恵に浴した業界として特筆すべきは、テレ・コミュニケーションとネットワーク産業──これらは数々の実際的な技術を金融市場に提供した──だろう。シスコシステムズやグローバル・クロッシングのような企業は、ほぼ一夜にして巨大企業へと変貌を遂げた。これらの企業は新たな「貨幣」(すなわちエクイティ・ファイナンス)を携えて、さらに大型の企業買収に乗り出した。
客観的な数値を用いて比較してみよう。1990年以前、最大規模のM&Aといえば、コールバーグ・クラビス・アンド・ロバーツが250億ドルの借入金を元手に、RJレイノルズ・タバコにLBO(レバレッジド・バイアウト)を仕掛けたことが浮かんでくる。ところが2000年、92年に公開を果たしたアメリカ・オンラインが株式交換のかたちでタイム・ワーナーを傘下に収めたが、その買収金額は何と1600億ドル超である。