【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
ポール A. アルジェンティ(Paul A. Argenti)ダートマス大学タック・ビジネススクール 教授
セルジオ・ジーマン(Sergio Zyman)元コカ・コーラ CMO
ジェームズ E. マーフィ(James E. Murphy)アクセンチュア マーケティング兼コミュニケーション担当 グローバル・マネージング・ディレクター
キム・スキルダム=レイド(Kim Skildum-Reid)スキルダム・レイド 社長

[ケース・ライター]
トーマス J. ウェイト(Thomas J. Waite)戦略アドバイザー

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

女性会員禁制のカントリー・クラブ

「ナイス・ショット」。18番ホールの悪名高いウォーター・ハザードの手前3ヤードでボールが止まった時、デュアン・ベッツは叫んだ。

 大手金融サービス会社、ペース・スターリングのCMO(最高マーケティング責任者)であるサンディ・マイケルズは、横目でちらりとキャディを見やった。デュアンはすっかり感心しているようだ。「ありがとう、デュアンさん」と彼女は微笑んだ。「でも、注意してくださいね。次はスライスして、クラブハウスに打ち込むかもしれませんから」

 サンディは、最近の記憶のなかで最高のプレーを展開していたが、これを自慢する素振りは微塵も見られなかった。彼女はこれまで、デュアンのようなベテラン・プレーヤーに、しかもそのホーム・コースで勝つなどという経験はなかった。

「今日はすべてが順調だね」。そう言ってデュアンはウィンクを投げた。まったく彼の言うとおりだ。サンディは、すでに今日、最も重要なゲームで勝ちを収めていたのだから──。