コーズ・ブランディングの台頭

 2001年、アメリカ企業の社会活動への献金は総額90億ドル──。

 とはいえ、自社ブランドを強化しようと戦略的に考え、慈善事業に力を貸している企業は少ない。したがって、緊急的な社会ニーズを慎重に選び、そこに金のみならず人力と知恵を投じ、自社の主義主張とその活動を広く世間に知らしめることに成功しているのは、数える程度の企業だけだ。

 これらの企業は、このような活動を自社事業と関連づけることで、さもなければ、とうてい得られなかったであろう恩恵に浴している。

 長年の間、このような慈善事業に関連づけたブランド戦略、すなわち「コーズ・ブランディング」は社会正義を掲げることで、社内外に経済的リターンとかつてないほどの評判を生み出した。しかも、社名の認知度、社員のモラールは高まり、ビジネス・パートナーとの関係も強化され、はては商品やサービスの売上増にも貢献した。

 1993年、大手化粧品メーカーのエイボンは、アメリカにおける乳ガンの早期発見に欠かせない第一歩として、この病気に対する意識の向上、とりわけ医療面で恵まれていない環境にある女性の啓蒙活動に乗り出すことを約束した。

 いまや同社の販売員は訪問営業の際、乳ガンに関する資料を必ず配布する一方、その資金活動に顧客を巻き込んでいる。エイボンはこの目標のために総額2億5000万ドルを集めた。もちろんこれは寄付に回されている。

 このようなコーズ・ブランディングの分野を見てみると、そのリーダー的存在であるコンアグラ・フーズは、餓えに苦しむ子どもをゼロにすることを目標に、フード・サービス・センター100カ所分の費用を負担し、年間約100万食を提供している。