【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
スーザン・バーネット(Susan Burnett)ヒューレット・パッカード 人材開発・組織効率担当 バイス・プレジデント
マイク・モリソン(Mike Morrison)トヨタ・ユニバーシティ 学長
ノール M. ティシー(Noel M. Tichy)ミシガン大学 ビジネススクール 教授
デイビッド・オーウェンズ(David Owens)ボシュロム企業内大学 CKO兼バイス・プレジデント

[ケース・ライター]
アイダレーネ F. ケスナー(Idalene F. Kesner)インディアナ大学 ケリー・スクール・オブ・ビジネス フランク P. ポポフ寄付講座教授

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

予期せぬ予算カット

 彼女の母校は何とも素晴らしい大学だった。歴史を感じさせる図書館の切妻屋根の上には太陽の光が躍り、花壇ではバラが咲き乱れ、中庭は静謐で、そこには真摯な向学心が満ちあふれていた。しかし、この時ばかりは母校の数え切れぬ魅力もカレン・バートンの助けにはならなかった。

 バートンは怒っていた。2週間前、ゼンダル・ファーマシューティカル(以下ゼンダル)人事部のシニア・バイス・プレジデントである彼女は、いつものようにCOO兼管理担当のエグゼクティブ・バイス・プレジデント、デイブ・パルマーに予算案を提出した。それが今朝、母校の学部長との約束でバートンが席を立とうとした矢先、パルマーからこの予算案が差し戻されてきたのだった。

 パルマーが書き加えた修正に目を通した彼女は、幹部研修に関わる予算が75%以上もカットされていることに、がく然とした。