「前進」が2003年のキーワード

 2002年は自己分析に終始した年であった。テロや国際紛争は言うに及ばず、経済の先行き不透明感とビジネス・リーダーへの信頼失墜を考えるとそれも不思議はない。

 エグゼクティブは成長と収益性を重視する姿勢を強めているが、事業、リーダーシップ、そして組織を動かす人々に関する思い込みと現実とのギャップを受け入れるのに苦労している。

 我々は自己分析から何を期待しているのだろうか。自分の組織にまつわる理解、そして世界における組織の位置づけへの理解を深めることばかりでなく、企業再生の方法を探ることだろう。

 そのため、今年のベスト・ビジネス・アイデアのリストは「前進」(moving on)に関するものだ。このアイデアが読者諸氏を刺激し、新しい思考様式に切り替われればと願ってやまない。たとえ古くからの問題に悩んでいる場合であってもだ。

 これまで同様、このリストはこれまでを総括するものでもなければ、対症療法を提案するものでもない。エグゼクティブが将来をにらみ、いま何を考えるべきか、我々なりにまとめた、きわめて独断的なものである。しかし同時にこれは、我々自身の自己分析の結果であることも事実だ。

 アイデアの選考プロセスは、我々自身が抱いていたビジネス観の一部に疑問を投げかけ、世界の見方を変えるきっかけになった。読者諸氏にも、明日への光明が探れるものとなれば幸いである。

1|組織を牽引するのはリーダーだけの仕事ではない〔Leaders Don't Lead Alone〕

 この数年間、リーダーシップといえば、ほとんどCEOに関する議論に終始してきた。ジム・コリンズは従来のイメージを一新させる「謙虚なリーダー像」について論じた。それは、CEOはスーパースターであるという主流の概念へのアンチテーゼでもあった。しかしこれも、トップの座にあるリーダーに的を絞っていた(HBR2001年1月号掲載の氏の論考"Level 5 Leadership: The Triumph of Humility and Fierce Resolve"[注1]を参照)。

 ビジネス誌の表紙を見れば、頼もしいリーダーシップの象徴を渇望する社会全体の風潮が、いまだに衰えを見せていないとわかる。しかし、昨今の事件によって明らかになったのは、企業を率いる1人の男性あるいは女性に過度に依存することへの危険性である。