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無軌道に拡大するフィランソロピー支出
フィランソロピー(企業の社会貢献活動)が低迷している。アメリカ企業による慈善活動への寄付は、2001年14.5%減少し(実質ドル・ベース)、利益に占める寄付金の比率は過去15年間で半減した。
理由は想像に難くない。経営幹部にとっては、「板ばさみ」の状況がますます深刻になっているからだ。すなわち、「企業の社会的責任」のいっそうの拡大を求める企業批判と、短期的な利益の最大化を求めて容赦なくプレッシャーをかけてくる投資家という相克である。
しかし、いくら寄付を増やしても批判を抑えることはできない。寄付を増やせば増やすほど、社会貢献への期待はますます高まるからだ。また最終損益への影響度という点から慈善活動への支出を正当化するのも、不可能とは言わないまでも非常に困難である。
このジレンマを受けて、フィランソロピーをもっと戦略的に進めていこうとする企業が増加している。だが、今日「戦略的フィランソロピー」として通用しているものが、本当の意味で「戦略的」である例はほとんどない。また、社会貢献としても特に効果的ではない場合が多い。
フィランソロピーを広報や宣伝の一形態として、「コーズ・リレーティッド・マーケティング」(社会的な意義を伴うマーケティング)や世間の注目を引くようなスポンサーシップなどを通じて、企業イメージやブランドの強化を図ろうとする傾向はますます強まっている。
アメリカ企業によるコーズ・リレーティッド・マーケティングへの投資は、企業の社会貢献支出全体に占める比率はまだ小さいものの、1990年の1億2500万ドルから、2002年には推計8億2800万ドルへと急速に拡大している。また企業メセナ(芸術に対する後援活動)も増加しており、2001年には5億8900万ドル相当に達した。
このようなキャンペーンは、たしかに価値のある社会的目標を支援するものではあるが、社会的な影響を生み出すと同時に、自社の認知度を向上させて、社員の士気を高めることを意図している。