-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
時間的プレッシャーの下では創造的思考は生まれない
本当に画期的なアイデアは、一朝一夕に生まれるものではない。たとえばチャールズ・ダーウィンの進化論のケースを考えてみよう。
進化論はそれ自体、長い進化の過程を経て生まれた理論である。ダーウィンは何十年もかけて、科学文献を読み、またイギリス軍艦ビーグル号に乗船して、ガラパゴス諸島をはじめとする遠い場所に赴いた。さらにそこで綿密な観察を行い、その観察内容やそれに関して思いついた説明を数千枚のメモにしたのである。
もしこの時彼が時間を惜しんだとしたら、世紀の飛躍は起こらなかったであろう。ビジネスにおいても同様で、新しいアイデアを創発させるには、比較的自由で、プレッシャーのない時間を持つことが大切である。
これを裏づける顕著な例がいくつかある。いまや伝説的存在となったAT&Tのベル研究所では、大きなアイデアを生み出すには時間が必要であるという企業哲学の下、トランジスタ、レーザー光線など世界を変えるイノベーションが実現された。ベル研究所の研究者たちは、これらの開発でノーベル賞をいくつか受賞した。彼らもダーウィンと同様に、時間をかけて創造的思考を行ったのである。
一方、過度の時間的プレッシャーによって創造的アイデアがひらめいたと思われるケースもある。
1970年、月に向かうアポロ13号上で重大な爆発事故が起こった。空気ろ過装置が壊れ、キャビンの中に二酸化炭素がたまり始めるという危機に直面した。装置を修理するか、取り替えるかしなければ、乗組員たちは2、3時間で死んでしまうだろう。
この時、ヒューストンにあるNASAの管制センターでは、エンジニア、科学者、技師が総出で、すぐにこの問題の解決に取り組んだ。宇宙船の中にあるのと全く同じ材料だけを使って、宇宙飛行士たちが自分たちだけでつくれる装置を開発するために、必死になって知恵を絞った。