【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
キャスリーン・キャルシディス(Kathleen Calcidise)
アップル・リテール・ストア 副社長兼COO
デブラ・ベントン(Debra enton)ベントン・マネジメント・リソース 社長
ダン S. コーエン(Dan S. Cohen)デロイト・コンサルティング パートナー
ニナ・アベルサノ(Nina Aversano)コンサルティング会社 経営者

[ケース・ライター]
エリック・マクナルティ(Eric McNulty)
ハーバード・ビジネス・パブリッシング ディレクター

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

期待の新任CEO

 シェリル・ヘイルストロームは、業務担当シニア・バイス・プレジデントのマーク・ドーソンのオフィスへ向かっていた。腕時計に目をやると、6時30分。しかし社内にはすでに人影はない。彼女は「21世紀で成功するには、これも変えないと」とつぶやいた。

 胸に抱いている分厚い報告書は、マークが作成した製造戦略資料である。いまこの資料が彼女を悩ませていた。報告書から、彼女のレイクランド・ワンダーズ(以下レイクランド)に対するビジョンを実現するために、マークが迅速な行動を起こす気がないのは明らかだった。それどころか、ビジョンすら理解していないようで、受け入れる気など毛頭ないと言っているように思えた。

 でも彼女は待った。しかしいまこそ彼の態度を問い質す時だ。ただしマークが他の社員同様、早々に退社してしまっていなければの話だが──。