PEファームが事業再建を加速する

 自動車部品メーカー、アキュライドの成功の秘密は、株式非公開企業として独立したことにあった。同社は長年ファイアストン・タイヤ・アンド・ラバー(現ブリヂストン・ファイアストン)という大会社の一部門として苦悶し続けていた。

 トラック用車輪、リムの製造という仕事はファイアストンのコア・ビジネスに比べれば周辺的なビジネスにすぎず、経営資源は枯渇し、上層部の目に留まることもなかった。

 そして1986年、アキュライドはプライベート・エクイティ専門投資会社(以下PEファーム)のベイン・キャピタルが買収するところとなった。こうしてファイアストンの官僚主義と予算に縛られた経営から解放されてから後、アキュライドの動きは俊敏そのものだった。

 まず同社は、大口顧客数社の独占的サプライヤーになれさえすれば、市場の利益の大部分を手にすることができるだろうと考えた。つまり、アキュライドの製品は顧客ごとにカスタマイズされる性格上、大口顧客の取引で大きなシェアを得られれば、営業コストや工具や金型といった固定費を大量生産によって吸収できるばかりか、マージンも増やせるだろうと計算したわけである。

 さっそく生産能力を高める一方、生産コストを下げるべく、高度に自動化された新工場の投資に踏み切った。この低コスト設備のおかげで、競合他社が提示するよりも好価格かつ好条件をターゲット顧客に提示できるようになった。

 グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバーやバッドといった競合他社は、いくら大企業とはいえ、なす術がなかった。四半期単位で利益の追求に追われている公開企業にはアキュライドに対抗してまで設備投資する意欲などなかったばかりか、そもそも車輪製造事業はコア事業でもなかったからだ。

 同社は選択と集中の戦略によってめきめき業績を伸ばした。2年足らずの間に売上げは急増し、市場シェアは2倍となり、利益は66%も成長したのであった。ベイン・キャピタルが、アキュライドを買収してたった18カ月でフェルプス・ダッジに売却した時、その売却価格は当初投資価額の25倍に達していた。その後もアキュライドは成長を続け、成熟市場にもかかわらず年率5%という成長率を90年代末まで続けた。

 このアキュライドの話はけっして特別なものではない。このような事業改革の先陣を切っているのは、総じてPEファームのうちトップクラスの成績を上げているところである。これらのPEファームはこうして投資家たちに破格のリターンをもたらしている。