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「成長の限界」が蔓延しつつある
売上高を伸ばすこと、そしてその成長率を維持することが、以前にも増して難しくなっている。この点については、口にこそ出さないが、経営者たちも気づいている。
たしかに、コストを削れば一時的に利益を増やせるだろう。あるいは「次年度以降は利益が上昇する見通しです」と発表すれば、株価を押し上げられるかもしれない。
しかし、売上高を着実に伸ばし続けるのは、けっして容易ではない。アメリカ経済が好調だった1990年代ですら、売上高、ひいては利益と株価を伸ばし続けた企業はあくまで例外だった。実際、90年から2000年までの10年間に、売上高を二桁成長させたのは、公開企業のわずか10%にとどまっている。
この数値に志気をくじかれた人もいるだろう。そんな人たちに悪い知らせが、またよい知らせもある。
まずは悪い知らせから。実情は、表面に表れた数字よりもさらに深刻なようである。近年、さまざまな手法を駆使することで、曲がりなりにも売上高は伸びてきたが、そろそろ息切れして、これ以上は二桁成長を続けられそうもなくなっている。
他方のよい知らせとは、その解決策が実は身近にあることだ。大多数の企業には、目に見えないケイパビリティ(実行能力)や優位性がさまざまに埋もれているはずである。これら「隠れた資産」を生かせば、持続的な成長を実現できるだろう。
読者のなかには「なぜ隠れた資産なのか」と首をひねる向きもいるかもしれない。目に見えない資産の重要性が高まっていることは、これまでもたびたび指摘されてきた。しかし、それら議論の大半は、「無形資産の価値をどのように測るべきか」という、方向違いの──おそらく解決できない──問題に向けられている。本来は、無形資産をいかに新たな成長へと発展させていくか、といったテーマのほうがよほど重要なはずなのだが。
加えて、これまでの議論は、ブランドや知的財産のように、以前から馴染み深い、いわば伝統的な無形資産のみを対象としている。しかし実際には、成長の起爆剤となりうる資産ははるかに幅広い。無論その一部には、一般的なものも含まれるだろうが、肝心なのは、各社それぞれに、最も効果的に生かせる資産は何かを見極め、その具体策を探ることである。