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事業会社のベンチャー投資が続かない理由
ベンチャー投資の旨味については、どの大企業もとうの昔から気づいていたようだが、なかなか事はうまく運んでいないようだ。
1990年代後半に繰り広げられた新興企業への投資合戦を思い出してもらいたい。リセッションの局面を迎えた途端、あっという間にその熱は冷め、みなが撤退に向かったことを。調査会社のベンチャー・エコノミックスによると、2000年9月時点で新興ベンチャーに積極的に投資していた企業のうち、その約3分の1が1年後に姿を消し、その間の投資額は80%下落したという。
このような具合に投資が減退するのは、一進一退を繰り返す歴史的パターンともいえるが、最近ではこの落差が以前より増大傾向にある。
98年末時点で、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(一般事業会社によるベンチャー・キャピタル:以下CVC)の総投資額は四半期ベースで4億6800万ドルにすぎなかったが、2000年初めには62億ドルにまで膨らんだ。しかし、その後2001年第3四半期では8億4800万ドルに落ち込んでいる。
専業のベンチャー・キャピタル(以下PVC)も経済動向に左右され減退するが、CVCほど過激な変動は見られない。ベンチャー・キャピタリストたちがCVCを低く見ているのは、その投資行動に一貫性を欠いていることが一因となっている。リスクが高く、しかもスピードが要求される環境にあって、市況によって投資額を上げたり下げたりしているようでは、度胸にも機敏さにも欠けるというのだ。
これを裏づけるかのように、大企業CVCの失策、それも衆目を集めるような例にも事欠かない。その結果、ベスト・タイミングにもかかわらず、新興企業への投資に躊躇する企業すら出ている。
その一方で、順風満帆とはいかないこれらCVCの事例を払拭するかのように、新興企業に継続的に投資しているところもある。ここ1年半ほど、多数のCVCが撤退に向かっているなか、インテルやマイクロソフト、クアルコムなどは、今後も大規模投資を続投する意思を表明している。メルク、イーライ・リリー、ミレニアム・ファーマシューティカルズなどはその後続としてCVCを開始している。
では、これらの企業が前向きな姿勢を示しているのは、どこから自信を得ているのだろうか。より一般論に近づけると、ベンチャー投資を成功させ、自社業務を大きく成長させられると考えるのは、いかなるゆえんなのか。