「人生とは何か」自問自答する瞬間が必ず訪れる

 2001年9月11日。地球上の何百万人もの人々が、世界貿易センター(以下WTC)が地に崩れ落ちる映像を信じられない思いで見つめていた。多くの人がショックと悲しみと共に、自分の人生を見つめ直す衝動に駆られたのではないか。この悲劇は、人間の命のはかなさを痛烈なまでの生々しさで見せつけたばかりか、「はたして自分は生きたいように生きているのだろうか」と問いかけた。

 人はだれしも人生の途上で、自らの人生の意義を問う。この日、多くの人々が、突如としてこの問いと向き合うこととなった。しかし、これほど劇的な状況でなくとも、周期的に自分の生き方を見つめ直す衝動に駆られるものである。

 たとえば、本誌の購読者である企業幹部たちは、そのキャリアの頂点で「私の人生とは何なのか」という問いにさいなまれるケースが多いようである。なぜだろう。

 多くの企業幹部は、仕事において40~50代にビジネスマンとして最も脂の乗った時期を迎えるが、それはちょうど自分の両親が人生の終わりを迎える時期でもあり、人はみな死を運命づけられた存在であることをあらためて思い知らされる時期でもある。

 その半面、問題解決力や不屈の精神といった仕事の上で成功をもたらす能力や性格ゆえに、たとえ困難な状況に直面しても何とか打開しようと頑張ってしまう。

 そしてある日、「何かがおかしい」という落ち着かない気持ちに襲われる。この意識が引き金となって、自らの人生への疑問が増幅されていく。過去14年、我々はマネジャーや企業幹部のコーチ役を務めてきたが、それこそ何千回と、このプロセスを目撃してきた。

 このプロセスは愉快なものではないが、この種の自覚は健全であると同時に、必要なものでもある。リーダーは、エネルギーを補充し、創造性や意欲を活性化させるために、また仕事や人生への情熱を再発見するためにも、このプロセスを数年に一度は経験する必要がある。

 実際、リーダーたる者、自分の夢を正しく把握せずして、目標を次から次へと達成し、周囲の人たちを奮い立たせることなど到底かなわない。