時代に必要な指針とは何か

 企業人、そしてすべての人にとって、2001年は激動の年となった。激変を引き起こすことになった9月11日の朝、戦争が勃発し、その後景気は急速に悪化した。

 たしかに、それ以前から景気はすでに下降傾向にあったが、この日、その傾斜は緑のスロープから暗黒の急斜面に一変。企業トップは突然、自分たちが非常にでこぼこした地面を音を立てて滑り落ちているのに気づいた。

 生き残りが問題の時に、だれがコンセプトや指針などにかまっていられるだろうか。もっと正確に言えば、顧客が購買意欲を失っていたり、レイオフが急務であったりするなどの緊急事態で手一杯の時に、だれが指針について考える暇があるだろうか。

 このような時は、高尚な指針などではなく、現実的なソリューションやパンチの効いたアドバイス、一時しのぎにせよ何らかの対応策など、ともかく出血を止める手立てが必要であると主張する人もいる。

 しかし、我々は、このような考えには反対である。おそらく読者も同感であろう。もちろん、企業存続のためにあらゆる手を尽くさなければならないのは確かだが、成功への道が険しい時ほど、その困難を克服するために、強力な指針がなおさら必要である。

 その場しのぎの対応で、企業はしばらくはやっていけるかもしれないが、企業を谷底から引き上げるのは、大胆にして画期的な指針である。『ハーバード・ビジネス・レビュー』はまさにこの考えに基づいて創刊され、それはいまも変わることのない我々の編集理念である。

 このような理由から、今年度の「新しい経営指針のリスト」には特に力が入った。このリストはけっしてすべての指針を網羅したものではない。今日の錯綜した時代にあって、ビジネスに大きな影響を及ぼすと思われる、最も優れた指針を紹介するものである。

 これらの指針から、読者が企業の足場を回復するのに必要な洞察を得ることができれば幸いである。つまるところ、現実が過酷な状況に転じる時こそ、果敢な者たち(タフガイ)の出番だ。そして、否応なく指針について模索し始めるのである。