-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
現在起こっている2つの大きな変化
さしたる注目を集めることなく、驚くべきことがビジネスの世界で起こっている。
第1に、働き手のうち唖然とするほど多くの者が、現に働いている組織の正社員でなくなっている。第2に、ますます多くの企業が雇用と人事の業務をアウトソーシング(外部委託)し、正社員のマネジメントをしなくなった。この2つの流れが近い将来変わる気配はない。むしろ加速していくものと思われる。もちろんそこには本稿に述べるような理由がある。
とはいえ、この組織と働き手との関係の稀薄化はあまりに重大な危険である。雇用関係にない人材の長期の受け入れや、雇用関係の雑務からの解放によるメリットの享受は、たしかに一つの行き方である。
しかし、人の育成こそ最も重要な課題であることを忘れてよいはずがない。それは、知識経済下において競争に勝つための必須条件である。雇用と人事を手放すことによって、人を育てる能力まで失うならば、小利に目が眩んだとしか言いようがない。
新種の従業員
いまや民間で世界最大の雇用主となったのは、スイスに本社を置く人材派遣会社のアデコだ。同社は毎日70万人の事務系、技術系の人材をクライアント会社に派遣している。アメリカだけで25万人である。
しかし同社は、業界ではマンモスだがシェアは大きくない。同業他社はアメリカだけで7000社ある。それらの人材派遣会社が毎日250万人を派遣している。世界中では、1000万人とはいかなくとも800万人を派遣している。そのうち約7割がフルタイムで働いている。
50年前に人材派遣業がスタートした時、その業務は、休暇や病欠のレジ係、受付、電話交換手、速記者の補充だった。
今日ではあらゆる職種を派遣する。社長まで派遣する。ある派遣会社では、設計から稼働までの工場建設のいっさいを仕切る製造マネジャーを派遣している。あるいは麻酔看護士をはじめとする医療技術者を派遣している。