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伝統的大企業P&Gとマイクロソフトの違い
1994年11月、私はプロクター・アンド・ギャンブル(以下P&G)を離れ、マイクロソフトにCOO(最高執行責任者)として迎え入れられた。最初の印象は、映画『オズの魔法使い』の台詞を借りれば、「ここはオハイオとはだいぶ違うみたい」(主人公ドロシーが初めて魔法の国に入った時の台詞)であった。
入社初日、私はカーキ色のズボンにスポーツシャツというカジュアルな装いで、シアトル郊外のマイクロソフトに午前7時に到着した。その数週間前、面接の2日目あたりから、シンシナティのP&G本社で26年間着用していたスーツとネクタイはやめたほうがよさそうだと感じていたからだ。
振り返れば、その時の私のズボンはプレスしてあり、マイクロソフトのなかではずいぶんマシな服装だったと思うが、他の社員の服装とは比較のしようがなかった。なにせ、だれも会社にいなかったのだ。しばらく経って出勤してきた秘書に「勤務時間はどうなっているのか」と尋ねると、彼女はこう答えた。
「特に決まっていません。時間帯はあまり関係ないのです。eメールでほとんど用が足りるから。とにかく、一人残らずワーカホリックです」
数週間後、ある新製品のアイデアが発表される会議で、ビル・ゲイツが若いマネジャーに質問を浴びせていた。そのマネジャーのいでたちは、半ズボンにサンダル、会社のロゴが入ったよれよれのTシャツである。
その時、初めて新製品について、まとまった説明がなされた。
ほどなく会議が終わり、次はどういう手続きになるのかとビルに尋ねてみた。マネジャーの話を文書にまとめ、それを経営陣が検討し、修正を加え、最終承認を出すのか、と。すると、ビルは私を見てニヤリと笑った。
「いや、あれで終わりだよ。もう意思決定は下された。後はあのグループがしゃかりきになって働くだけだ。そうだろ」