心にひそむ裏コミットメントが変化を拒む

 マネジャーならだれしも、「変化を歓迎しない部下」といえば、思い当たる節があるだろう。その原因が、非常に把握しやすい場合もある。組織内の力関係が変わることを心配したり、新たなスキルの習得を面倒だと思ったり、新しいチームに入ることでストレスを感じてしまったり……といったところだろう。

 しかし時に、変化を拒む理由がまったく見当がつかない場合もある。変化に十分対応できるスキルも賢明さも持ち合わせており、会社への忠誠心も厚く、変化の方向にも心から賛成していると思われるのに、積極的には何もしようとしない。

 なぜなのか。我々は、組織心理学者として、このような心理作用を実に数百回に及んで観察してきた。その結果、最近になって、一見単純だが、意外な結論にたどりついた。

 変化への抵抗は、変化そのものに反対しているのでもなければ、単なる惰性の結果でもない。ある変化に心から賛成しつつも、一方で、心にひそむ「裏コミットメント」に無意識にエネルギーを費やしてしまっている、というのが真相である。

 その結果生じる力の均衡状態が変化への取り組みを失速させてしまう。これは変化に対する抵抗のように見えるが、むしろ変化に対して起こる、一種の心理的な免疫反応、拒否反応というべきものである。

 マネジャーが、部下の裏コミットメントを見抜くことができれば、それまで不合理で無意味なものにしか見えなかった行動が、突如として合理的かつ巧妙なものに見えてくる。

 ただし、合理的とはいっても、上司や本人の目標とは逆方向に、である。

 たとえば、及び腰のプロジェクト・リーダーは、無意識に裏コミットメントを抱いているのかもしれない。いまの仕事をあまりにうまくこなしてしまうと、次の仕事が難しいものだった時に自分の手に負えなくなる、それで評価を下げてしまうのは嫌だというコミットメントである。