「スター社員」が退職すると何が起きるのか

 多くのマネジャーが怖れている一言がある。いちばん有能な社員から「ほかによい仕事を見つけたので、この会社を辞めます」と宣言されることだ。

 有能で、組織にも慣れた信頼できる社員を失うのは、それだけでも十分に痛手である。顧客との結びつきが強い社員に辞められた場合には、長期的な影響はもっと深刻になる。顧客まで根こそぎ持って行かれる、というケースも少なくないからだ。

 会社の評判というものは、往々にして「社員とその顧客との関係」と分かちがたく結びついている。

 コンサルティング会社の場合、顧客である企業の経営幹部の多くは、会社そのものよりもそこに所属する有能なコンサルタントを大切にする。

 また、たいていの人は、セールスマンが勧める製品やサービスよりも、親切で世話好きのセールスマン本人のほうが実は好きなのだ。

 病院へ通う患者は、足しげく通っている病院よりも、そこで働く医師との結びつきのほうが強い。

 顧客との結びつきが強いこうした人たちを、我々は「キー・コンタクト・パーソン」(key contact employees)と呼ぶ。

 彼らが辞めると、彼らの顧客だった人たちは見捨てられたかのように感じやすい。そして、競合他社からの売り込みに気を引かれるようになる。