「2度目の成功」を勝ち取るために

 子会社なり事業部なりが難しい仕事──たとえば銀行の新支店を運営する、新製品を販売する、など──をうまくやりおおせたとしよう。当然、本社は2度目の成功を期待する。実際、大企業が大企業でいられるのは、賢明なプロセスや業務手順を適用した時の利益の規模が大きいからにほかならないからだ。

 ところが、成功を繰り返すのは意外に難しい。どの産業もベスト・プラクティスを再現し、組織知をうまく運用しようと躍起になっているが、それでもほとんどの試みは失敗に帰する。

 残念ながら多くの調査もこの事実を裏づけており、ある調査によれば社内のナレッジ・シェアリング(知識共有)に満足している経営幹部は12%しかいないという。また別の調査では、企業は事業部門間の知識移転で常に予想を上回る問題に直面していることがわかった[注1]。

 数字の裏づけはないものの、知識資産活用の担当役員であるCKO(最高知識統括責任者)やCIO(最高IT責任者)は、どうやら使命をきちんと果たしていないらしい。どの資料からも、彼らが実に頻繁に首をすげ替えられることがうかがわれる。

 なぜこのようなていたらくに陥ったのだろう。実は仕事そのものの困難さではなく(もちろん生易しい仕事ではないにしても)、取り組む姿勢のほうに根本的な問題がある。「2匹目のドジョウ」を狙うマネジャーには、株で一獲千金を狙う新米投資家さながらの楽観主義と自信過剰がしばしば見受けられる。

 たとえば、ほぼ完璧に進行した事例を超えようと意気込むケース、多種多様な事例からいいところだけ寄せ集めて完全無欠な合成を目論むケースなどである。

 マネジャーたちは、最初にベスト・プラクティスを成功させたスタッフであれば、成功の理由をすべて理解していると考えがちだ。だが、その大半は見当違いである。こうした過度の楽観主義の結果、ベスト・プラクティスの再現を試みるマネジャーは、求められる規範から大幅に逸脱した行動を取りやすい。

 2度目(そして3度目、4度目、5度目)の成功を収めるよい方法は他にある。何よりもまず取り組む姿勢を変えること。そしてプロセスや組織に厳格な規範を課すことだ。