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意思決定は特別なイベントではない
リーダーは、いろいろな場面でその力を発揮する。戦略を掲げ、周囲の人間にモチベーションを与える時などはその一例だ。しかし何といっても、その意思決定の善し悪しが、リーダーとしての運命を左右している。
ただし、これを当然と思われるならば、以下の事実は驚きに値するだろう。経営者が、代替案に不足し、なおかつ現時点での選択が最良のものであるという確証を持たないまま、実際に意思決定を行うことは、日常茶飯事なのである。
我々が数年間調査を続けた結果は、リーダーの意思決定に誤りがあったケースが大半を占めている。
なぜか。一般的に、意思決定がイベント──独立した選択決定という一つの行為──としてとらえられているからだ。机に向かっている最中や、ミーティングで進行役を務めている時や、スプレッド・シートをにらんでいる間などの、ある一時点で意思決定は行われるものだと。
このような古典的な考え方では、リーダーが、自分自身の経験や勘、調査結果のいずれかに基づいてもしくはこれらを総合して、独自の意思決定を下してしまうことになる。
たとえば、売上げの悪い商品を市場から撤退させるか否かの決断に迫られたとする。「イベント型」のリーダーであれば、まず自分一人で熟考する。その後アドバイスを求め、報告書を読んだうえで、再び熟考する。そしてようやく、イエスかノーかの結論を出し、組織に実行させるのだ。
ところが、このようなやり方では、社会や組織といった、スケールの大きい観点を見落としがちになってしまう。しかもこれが最終的に、意思決定の成否を決定してしまうのだ。
実際、意思決定というイベントは存在しない。意思決定とはプロセスでとらえられるものであり、週や月単位でなく、何年という年月にわたることすらある。力関係や政治的な駆け引きをはらみ、個々人のニュアンスや組織の歴史が、多々反映される。また、このプロセスにおいては、議論や討論が活発に繰り返され、実行時には、組織のあらゆるレベルでのサポートが不可欠となる。