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サウスウエスト航空はアリの生態を研究して貨物事業を効率化させた
1年ほど前の話である。サウスウエスト航空(以下SWA)は、貨物輸送事業に頭を悩ませていた。
貨物スペースに1機当たり7%を割いているにすぎなかったが、一部の空港ではその量をまかなうだけの場所に乏しく、貨物航路と荷役作業に支障を来たしていた。
当時、SWAの作業員たちは各直行航路の第1便に貨物を積み込もうとしていた。一見理にかなっているかのようだが、実はこれが原因で、荷役作業に膨大な時間がかかっており、しかも無理矢理航空機を満杯にさせることもあった。
SWAは、この問題を解決するために突拍子もないものに着目した。昆虫のアリである。アリが餌を探す方法について調べたのである。アリは単純なルールに従い、餌場まで効果的にたどり着くルートを必ず見つける。
この研究結果を先の問題に当てはめてみたところ、驚くべき発見があった。最終目的地とは違う方角を経由する飛行機に貨物を積んでおいたほうが効率的なケースがあるというのだ。
たとえば、ボストン行きの荷物がシカゴとアトランタを経由する便に積み込まれていたとしよう。この場合、いったんシカゴで荷を降ろし、次のボストン行きの直行便に積み替えるよりも、そのまま遠回りではあってもアトランタ便に積み込んだまま飛び立たせたほうが、効率的だったりするのである。
同社はこの研究結果を応用することで、最も繁忙な貨物基地では荷物の積み替え率を80%まで削減し、作業員の労働量を20%減らし、夜間の積み替え件数も劇的に減少した。この結果、保管スペースを縮小し、賃金も最小限に抑えられることになった。
そのうえ、貨物を満載して飛ぶ航空機の数も減った。これにより、同社には新規事業に乗り出す大きなチャンスも生まれてきた。これら一連の改善によって、年間1000万ドル以上の増益が見込まれている。
ユニリーバ、マグロウヒル、およびキャピタル・ワンなども、SWAと同じような社会性昆虫の行動を研究し、工場などの生産施設のスケジュール化、社員のワーク・シェアリングやグループの編成、そして戦略立案すらも効率化させる方法を開発した。
「群知能」とは何か
アリやハチなどの社会性昆虫が教える知恵とは、いったいどのようなものだろうか。まずはシロアリを例に考えてみよう。