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従来のマネジメント手法では創造性は育たない
少なくともこの10年ほどを見ると、「イノベーション」こそが企業の希求してやまない聖杯だった。マネジャーたちは、会社から教え込まれたとおりに、懸命にイノベーションを追い求めてきた。
創造的なプロセスに必要なインセンティブやインプットを見つけることに注力した。顧客をはじめ、いろいろな立場からの意見を取り入れた。また成功の可能性に応じて新しいアイデアに投資し、失敗を避けるべく力を尽くしてきた。残る問題はただ一つ、こうした努力がいっこうに功を奏してこなかったことである。
創造性を育むことは、経験豊富な経営幹部が考える合理的なマネジメントとは相いれない。直感に反するどころか、奇怪にさえ思えるほどだ。
たとえば、ストレスの少ない楽しい職場をつくり、意見の衝突を未然に防ぎ、金や時間の使い方をマネジャーが厳しく管理すれば、そのうちに創造性が開花するものと考えがちだ。しかしそうはいかない。
筆者は10年以上にわたって創造力に富む企業やチームを研究してきた。その結果、創造性の高い職場は往々にして非効率で、大概においてストレスが多く、「常道を踏み外すマネジメント」がベスト・アプローチであることを知った。
筆者の見るところ、創造性を引き出すには、既存のマネジメントの逆を行く必要がある。ROI(投資収益率)の予測などはあまり気にかけず、新しい着想に賭ける。過去の実績は無視する。また安穏としている人間を捕まえて、互いにぶつかり合うように仕向けることである。
優れた創造性マネジメントとは、面接で癇にさわるような人物を採用することである。顧客が意見を述べている時に、耳に指を突っ込み「聞きませんよ、聞きませんよ」と唱えかねない部下を称賛し、奨励することである。
本稿では、創造性のマネジメントにおいて、奇抜に見えるが間違いなく効果の上がるアイデアをいくつか紹介していく。
第1は採用時についてのアイデア、第2はマネジメントそのものについてのアイデア、第3はリスクとランダムネス(行き当たりばったり)に関してのアイデアだ。いずれも確かな学術研究の裏づけがある。
さっそくその奇抜な考え方を見ていくことにしよう。筆者が研究調査した範囲だけでも、みごとな成果を収めた企業やチームは非常に多い。