コスト削減の余地は社外にあり

 この10年間、企業は競い合って生産性を高めてきた。「すでに贅肉は削ぎ落とした」と胸を張る企業も多いだろう。

 もっともである。ビジネスプロセスを見直し、間接費を減らし、余分な活動を取りやめてきた。ミスやコミュニケーション不足を解消して、品質の向上に努めてきた。事業ユニット間の壁を崩して、コラボレーション(協働)と情報の共有化を進めてきた。いまや、業務効率は極限まで高まっている。

 しかし、本当の戦いはこれからなのである。

 たしかに、社内の業務は以前と比べて大幅に合理化されている。一方で、社外とのビジネスプロセス(他社との取引、折衝、連絡など)にはまだまだ無駄が多い。調達プロセス──サプライヤーから見ると注文処理のプロセス──を考えてみるとよい。

 作業が重複し、情報が錯綜していないか。発注元では調達担当者が注文書を作成する。それを受けたサプライヤー側でもまた、受注担当者がほぼ同じ書類を作成する。この2つの作業を連動させようという動きは、まったく見られないのではないか。取引データを電子的にやり取りしていたとしても、事務処理その他の作業は別行程でなされる。発注企業と受注企業の間には深い溝がある。

 企業間の足並みが揃っていないため、多くの処理が重複している。同じデータがいくつものシステムに入力される。同じような書類が何回も作成され、回覧される。同じチェック作業や承認作業などが必要以上に繰り返される。このような状態のままで他社とデータのやり取りや作業の統合を進めると、不整合、誤り、理解不足などが発生し、無駄がいっそう増えてしまう。

 このような事態を克服するために、数多くのスタッフが動員されることになる。企業会計が視野に入れるのは社内のみであるため、こうした非効率は表面に表れてこないが、現実には莫大なコストが生じている。これまでに効率化されているのは、あくまでも社内に閉じた業務のみなのである。

 企業間のビジネスプロセスは、いわば「広大なフロンティア」だといえる。そこにはいまだ、コスト削減、品質向上、スピードアップなどの余地が残されている。これからの10年、産業界ではこの分野の効率を高めようと競争が繰り広げられるだろう。

 勝者となるのは、旧来の視点にとらわれない企業、パートナーと密接に協力しながら、企業間の垣根を超えてビジネスプロセスの設計やマネジメントを実践できる企業だと考えられる。

 言い換えれば──「エフィシェント」(効率的)ではなく──「スーパーエフィシェント」(超効率的)な業務を目指し実現する企業である。