ゆっくりと、しかし確実に浸透し始めた新ITアーキテクチャ

 ここ1年ほど、eコマース(電子商取引)旋風が徐々に静まる一方で、インターネットの新たな可能性が高まっている。

 今回の旗振り役はドットコム企業やその投資家ではなく、ハードウエアやソフトウエア、その他各種サービスを提供しているコンピュータ業界の大手企業である。広告や白書、商談の場で、企業の情報システムへのまったく新しいアプローチが怒涛のごとく喧伝されている。

 名称は多種多様──マイクロソフトは「ドットネット」、オラクルは「ネットワーク・サービス」、IBMは「ウェブ・サービス」、サン・マイクロシステムズは「オープン・ネットワーク環境」とそれぞれ表現している。

 新たなアプローチの眼目は、ハードやソフトを自ら所有し、保守する従来型のIT(情報技術)構築に代わって、これからは個別サービスをインターネットで買うようになる、というものである。

 この考え方に対して、首をかしげる企業幹部は多い。誇大な売り文句や難解な流行語には食傷気味なうえに、多大な資金と時間をつぎ込んだインターネット関連の取り組みは、ようとして進展してこなかったのだから当然だ。

 しかし、今回は事情が大きく違う。テクノロジーを提供する側は空手形を切っているわけではない。派手な宣伝文句の裏で、新しいIT導入のためのインフラに巨額の投資を行っている。

 こうした努力が続けば、今後1、2年のうちに、多彩なインターネット利用サービスが次々と現れるだろう。そして、従来の社内システムに比して相当なコスト節減をもたらすと共に、企業間コラボレーションの可能性も高まっていくだろう。だれもが抱くこれまでの「ITマネジメント」像は、ゆっくりと、しかし確実に、塗り変えられていくに違いない。

 本稿では、企業幹部向けに、この新しいIT戦略、ウェブ・サービスへの対処法をお教えする。

 まずウェブ・サービス・アーキテクチャの仕組みと、従来のITアーキテクチャとの違いを解説し、それが企業に大きな利益をもたらす理由を説明していこう。また、新アーキテクチャ採用のための明確で現実的なプラン、組織内の混乱を抑えながら成果を上げていく段階的な方法を示していく。

 実際、筆者の判断するところではウェブ・サービス・アーキテクチャの大きな利点は2つ、オープン性とモジュラー性にある。導入に当たってはリスクの高いビッグバン的方法は必要ない。すぐ生産性につながるものから取り入れ、インフラの堅牢性と安定性が高まるのを見ながら、新しい機能を徐々に導入していけばよいのである。