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市場対応力のある情報シンクロナイズ
カリフォルニア州サンタクララにあるパーム・コンピューティング(以下パーム)の本社。その内部に一歩足を踏み入れると、1枚の大きなポスターが目に入る。同社のハンドヘルド・コンピュータが他社製品と差別化している決定的な特徴、すなわち「ホットシンク」のボタンのポスターだ。
パームのユーザーであれば、パソコンに接続したクレードルに本体を差し込んでホットシンクのボタンを押すと、いとも簡単に、何の滞りもなくパソコンとデータのシンクロナイズ(統合・同期化)ができる。ものの数秒で、この2つのデータ記憶装置の間にある壁が消え失せるわけだ。
先のポスターはパームの主要イノベーションであり最大のセールス・ポイントでもある特徴の一つを強調しているものだ。
だがこれは、IT(情報技術)一般が企業において果たすべき役割とは何かをはっきりと示すものでもある。こう自問してみよう。「当社にはホットシンクのように全社の情報をシンクロナイズできるシステムがあるだろうか」と。
ある程度の規模の企業であれば、組織の間を仕切る壁やテクノロジーを分ける壁がある。たとえば、商品ライン、事業ユニット、販売チャネル、地域、およびITシステムなどははっきりとした壁で仕切られている。
この壁はしばしば硬直的でもあり、広範囲にわたって強力な顧客リレーションシップを築こうとする時に、企業の能力を削ぐ原因となる。壁は往々にして情報の流れを遮る。そのせいで、複数の事業部が同一顧客に営業をかけ、気がつかないうちに1つの商談を同一企業内で競い合う、という事態に陥ることもある。
ここで、あなた自身と企業との関係がどれだけ多様化しているかを考えてみよう。もしAT&Tの顧客であるなら、AT&Tとの間にはさまざまな関係があるのではないだろうか。
長距離通話の契約者、携帯電話のユーザー、ケーブルTVの視聴者、インターネット接続サービスの加入者、そしてクレジット・カードの所有者。あなたの個人情報は5つのバラバラなデータベースに収められ、同社にとっては5人の別々の顧客として映る。
企業内で権限の委譲が進めば進むほど、こうした情報のフラグメント化(断片化)に伴うコストは増大する。事業部を隔てる壁の数が増え、硬直化するにつれて、ますます多くの市場機会を失う傾向にあるだろう。
経営者はこのような問題に気がついている。この結果何が起こるかを日々目にし、感じているからだ。ところが彼らは往々にして、それは社員の意識の問題だ、と思い込みがちだ。