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タンデムの悲劇
1980年代、タンデム・コンピュータズ(以下タンデム)は、素晴らしい業績報告を続け、一躍証券市場の寵児となった。タンデムのCEO(最高経営責任者)兼創立者の一人であるジェームズ・トレイビッグは、当時大ヒットとなったテクノロジーの生みの親である。すなわち、24時間データ処理を余儀なくされる銀行や通信関連企業向けに、システムダウンを起こさないコンピュータを開発したのだ。
ところが83年になって、思わぬ事実が発覚した。直近のタンデムの財務諸表には、実現されていない売上げが計上されているというのだ。この結果タンデムは、売上げの下方修正を余儀なくされた。
株式市場は、これに即刻反発した。タンデム株は、すぐに30%値下がりし、後にやや持ち直したものの、最後までこの失策を拭い切れなかった(最終的にタンデムは、コンパックに買収された)。
トレイビッグは、『ウォール・ストリート・ジャーナル』のインタビューで、「タンデム時代を振り返り、最良の日はいつですか」と問われ、答えることができなかった。しかし、「最悪の思い出は何でしょう」という問いには、「利益を下方修正した日」と即答している。
企業会計に伴うリスクは、上昇傾向にある。世のなかの経済動向が堅調であれば、投資家の期待に応えるために売上げを伸ばさなければならないというプレッシャーは大きい。また経営者にしてみれば、報酬面でのインセンティブからも、売上げを伸ばそうとするだろう。
SEC(アメリカ証券取引委員会)は、財務諸表が利益操作されるなどにより、投資家が判断を誤るケースが急上昇していると警告している。これによりCEOも憂き目を見るが、最大の犠牲者は株主である。株価が不安定な今日では、タンデム株の30%値下がりは、まだ傷は軽いほうかもしれない。
財務諸表に関する訴訟も増え続けている。
アメリカにおいて、会計詐欺に関する集団訴訟は、91年には55件にすぎなかったが、98年になると、実に約3倍もの数に跳ね上がっている。
回避すべき6つの危険ゾーン
それでは、企業会計による大惨事を回避するためにはどうすればよいのか。株主そして取締役は、次の6つの危険ゾーンに細心の注意を払うことが必要だ。
具体的に挙げるならば、以下のような項目である。