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持続可能な成長こそ事業方針の根本である
他の多くのメーカーと同様に、当社も伝統的に、より多くの「モノ」をつくることによって成長してきた。事業の成長に比例して、工場が消費する原材料とエネルギー量、さらには産業廃棄物や排気ガスの量も増えていった。
しかし年月が経つにつれ、避け難い、しかも困った事実が明るみに出てきた。つまり、当社の事業はいまでは通用しない2つの前提条件のうえに成り立っているため、もはや長期にわたって維持していくことができないということだ。
前提の一つは、炭化水素などの再生不可能な資源が安価に無尽蔵に供給されるというもの。もう一つは、地球のエコ・システム(生態系)は、生産・消費活動によって発生する廃棄物と排気ガスを無制限に吸収できるというものである。
最近、多方面の専門家が開発途上国の消費率を推定している。その見解は分かれるが、全人類が平均的なアメリカ人と同じ生活水準を維持するためには、少なくとも地球3つ分の資源が必要となるようだ。
もちろん地球は一つしかない。なかには開発途上国の生活水準を上げるためには、先進国の水準を引き下げなければならないとの主張さえある。
私は、このようなゼロサムの物の見方には大反対だ。創造力と科学技術を有効に活用するなら、株主に大きな利益をもたらし、事業を拡大し、世界中のありとあらゆる人々のニーズに応えると同時に、事業活動と製品が生み出す環境負荷を低減することもできると信じている。
これは「持続可能な成長」(sustainable growth)へのチャレンジであるが、そのためには、すべての事業において業績向上を目指すという意欲が必要である。
もちろん、持続可能な成長は、環境保護や社会の向上に寄与するだろう。それだけでなく、グローバルな経済環境における持続可能性が、途方もなく大きな経済価値を生み出すという点を、常に基本的な根拠として見据えなくてはならない。
デュポンは、多様な分野で事業を展開するグローバル企業だ。この成長のコンセプトを、実際の事業活動を展開するうえで認識しておかなければならないことは何か。すべての事業部門が持続可能性を企業としての社会貢献活動としてとらえるだけではなく、事業拡大への絶好のチャンスと認識しなければならない、ということである。
そこで、「統合的科学」(integrated science)、「知識集約」、「生産性向上」の三本柱からなる戦略を策定した。それと共に進捗状況の評価を定性的証拠や事例証拠に頼るのではなく、定量的に評価する新しい方法を開発した。