プラットフォーム企業の成否を分けるものは何か

 デジタルプラットフォームビジネスは、それを生業としている企業においても、そうでない企業においても目覚ましい成功を収めてきた。世界の時価総額ランキング上位10社のうち、7社がプラットフォーム事業を立ち上げている。ユニコーン企業では60%以上である。小売業のウォルマートやアマゾン・ドットコムから、ソフトウェアプロバイダーのセールスフォースやサービスナウまで、プラットフォーム事業以外からスタートした企業も、プラットフォーム戦略を通じて成長を加速させてきた。

 しかし、成長の機会を逸している企業も極めて多い。例として、配車サービス市場におけるウーバーとリフトの競争を考えてみよう。ウーバーは同社のプラットフォーム上で、補完的なサービスをいくつも立ち上げた。イーツ(料理宅配)やパッケージ(即日配送)、ツーホイールズ(自転車とスクーターのレンタル)、レント(レンタカー)などで、それらのアイコンをアプリの中に加えていった。この展開を実現するには、レストランやレンタカー会社などのサービス提供企業を、新たにプラットフォームに加える必要があった。

 これに対してリフトは、基本的には配車サービスに集中してきた。当然ながら、リフトの売上高の伸びは比較的ゆるやかで、過去5年間では36億ドルから44億ドルへの増加だった。一方のウーバーは、130億ドルから370億ドルにまで成長した。他にプラットフォームの成長機会を追求できていない企業としては、クレイグズリストやウォルト・ディズニーなどがある。クレイグズリストではプラットフォーム上に支払いシステムが導入されておらず、ディズニーではライセンスを受けた企業が販売を行えるマーケットが、プラットフォーム上に存在しない。

 なぜ成長を実現できるプラットフォームがある一方で、そうでない企業があるのか。筆者らは、巨大プラットフォーマーに成長した数社の企業を含む、50社以上のプラットフォーム企業の軌跡を研究してきた。そこからは成長できない主な理由が4つ見えてきた。

 まず、成功していない企業は、すべての成長の道筋を体系的に検討していない。また、プラットフォーム上のさまざまな種類のインタラクション(interaction:2者かそれ以上のユーザーの間で行われる、プラットフォーム上の活動や取引の種類)を「所有する必要がある」と誤解している。実際にはそれらを「所有しない」ことで大きな成長がもたらされるケースが多い。さらには、自社に価値を提供する、あるいは自社に対して破壊的でさえある企業を巻き込むという選択肢を見逃している。最後に、自社の事業範囲を広げる説得力のあるテーマを見出していない。

 本稿では、こうした成長の障害を克服するためのアドバイスを提供する。

4つの成長機会

 プラットフォームの成長の構成要素は、「インタラクション」、および「サイド」(side:ユニークユーザーのグループ、および協業企業)である。たとえば、ウーバーのインタラクションは配車サービスや料理の宅配などであり、サイドはウーバーのサイト上でサービスを提供する協業企業と、それらのサービスを利用するユーザーすべてである。

 プラットフォーム事業では、成長は主に4つの領域から生じる。具体的には、既存のインタラクションにおけるエンゲージメント(参加、利用)の拡大、新たなインタラクションの追加、新たなサイドの追加、新たなインタラクションとサイドの同時的な追加の4つである。