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リモートもハイブリッドも
このまま続けることはできない
この1年で、企業は規模の大小を問わず、従業員に対して就業日の完全オフィス勤務の再開を義務づけるようになった。リモートやハイブリッドの勤務体制は労働者のパフォーマンスを低下させる、といったエビデンスの増加を受けた動きである。
一方で、この選択肢を取れない企業も多い。その理由としては、もはや全従業員を収容するだけのオフィススペースがなく、すぐには拡張できないか、そこに予算を使いたくない、あるいは従業員がすでに地理的に分散してしまっている、替えの利かない人材が離脱するおそれがあるなど、さまざまなものが挙げられる。本稿は、リモートやハイブリッドの勤務体制を少なくとも当面は維持したいと考える企業に向けた論考である。
そのような企業のリーダーは、全員がオフィスに出社していた頃のやり方では、リモートワークやハイブリッドワークのチームをうまく管理できないという現実に直面しているはずだ。その状況が続けば、組織文化、日々の人材管理、昇進の判断、そしてパフォーマンス全般に重大な問題が生じる。
オフィス内で生まれていた共同作業やコラボレーションをバーチャル環境で再現するためには、新たな規則やポリシーを制定しなければならない。加えて、現在の慣行を一部制限するような指示も必要である。
リモートワークの問題点
リモートワークが、ソフトウェアエンジニアのコラボレーション、ITワーカーが生み出すアイデアの質、データ入力作業の生産性に与える影響に焦点を当てた過去数年間の研究によると、リモートワークやハイブリッドワークにはパフォーマンスを抑制する作用がある。ただし、リモートワークの問題点──新入社員が実践的な仕事を覚えて一人前になるのが難しいなど──が浮き彫りになるまでには時間がかかった。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの企業がリモートワークを強いられてから5年が経過したいま、アマゾン・ドットコム、UPS、ボーイング、ウォルマート、JPモルガン・チェースを含むいくつもの企業が、オフィス復帰を義務づけることでパフォーマンスの低下に対処しようとしている。米国と並び、雇用主がリモートワークを最も寛容に受け入れた英国でも同様の動きが見られる。KPMGが2024年に11カ国の大企業のCEO1325人を対象に実施した調査では、83%のCEOが今後3年以内に完全オフィス勤務の再開を要求することになるだろうと考えていた。
筆者の一人(キャペリ)は、ペンシルバニア大学ウォートンスクール博士研究員(当時)のジャスミン・ウーとともに、これらの課題について深く研究した。筆者らは2023年の後半、ある金融サービス企業の3カ国38オフィスで働く従業員720人にインタビューを実施した。同社には完全リモートで勤務する20人ほどのグループが1つあり、その他はハイブリッド体制で勤務していた。そして調査の結果、リモートワークに対応して個々の労働慣行が変化する経緯が詳しくわかり、それらがパフォーマンスにまつわる問題を引き起こす理由が判明した。
簡潔に言うと、そこで浮かび上がった問題点は、長年にわたり、オフィス内の個人的なつながりを通して無意識のうちに解決されていた類いのものだった。いずれも、従業員をいかにまとまって行動させるかという点に関連している。