-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
無形財と有形財
サービスを売るのか、製品を売るのかによって企業を分類しても、それほど経営の役には立たない。あえて分類するならば、表現を変えたほうが有意義である。
「サービス」と「製品」という代わりに「無形財」(intangibles)と「有形財」(tangibles)と呼ぶほうがよい。工場でつくられるものが何であれ、市場では例外なく製品の「無形性」が売買されているからだ。
無形財のマーケティングと有形財のそれがどう違うのかを考えてみると、この分類の有用性がはっきりする。もちろんこれら2つの違いは歴然だが、重要な共通点があることがわかる。
この新しい用語を使うと、異なる2つのマーケティングにはどのような類似性があるのかがはっきりとしてくる。すなわち、有形財と無形財のいずれにも無形性が宿っているのである。
マーケティングを突き詰めれば、顧客を獲得し、それを維持するための活動である。顧客を獲得するうえで決め手になるのが無形性である。ただし顧客を維持するという場合には、無形性の強い製品には大変厄介な問題が持ち上がる。
本稿では、まず無形財と有形財のマーケティングに、どのような無形性が重要となるのかを明らかにする。次に、無形財の売り手が顧客の維持において直面する問題について考える。
無形性が顧客獲得の決め手となる
無形財には、旅行代理店、貨物輸送、保険、修理、コンサルティング、コンピュータ・ソフトウエア、投資や仲介サービス、教育、ヘルスケア、資産管理サービスなどが含まれる。
これら無形財は、ほとんどの場合、前もって試用したり、点検したりできない。見込客がこのサービスを買うと何が得られるのかを知るには、「別の何か」に頼らないわけにいかない。
旅行の行き先に迷っている時、キラキラ光る青い海辺に面した異国風のリゾート・ホテルの豪華な部屋を、みごとなアングルと色合いで表現した写真を見たりすることで、あれこれ思いをめぐらすことができる。
あるソフトウエア・プログラムの秀逸さ、投資銀行や油田探査会社の仕事ぶりを知るために、そのユーザーからアドバイスを仰ぐことはできる。