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環境激変下の事業シフト戦略
今日のビジネス・リーダーならだれもが痛感しているように、科学テクノロジーのブレークスルーは業界の競争地図を一変させてしまう。こうした潮流に巻き込まれてしまったら、業界のサプライチェーンにおいて突如発生した価値の源泉が移動するのに対処するため、戦略を練り直し、事業活動を線引きし直さなければならない。
テクノロジーに精通した新興の専門家集団がこぞって市場に参入し、新しい価値の源泉がもたらす利益を虎視眈々と狙う一方、既存の大手企業は新たな可能性を求めて右往左往する。
医薬品産業は、この種の秩序崩壊を示す典型的な業界である。ヒトゲノムを解明しようとする競争によって、科学知識は爆発的に増え、新技術の開発に拍車がかかり、新薬開発をめぐる実体経済が大きく変わる。
何十億ドルという規模の資本が投資され、ハイテク新興企業が雨後の筍のごとく生まれている。同時に、大規模な製薬会社は豊富な資金力を生かして無数の買収・提携を繰り返して、優位性を失わずに何とかこの嵐を乗り切ろうと必死になっている。
ミレニアム・ファーマシューティカルズ(以下ミレニアム)も、業界の新秩序を形成しつつある戦略的提携と無縁ではない。
同社は1993年、自動化研究開発技術(automated R&D technologies)を利用した遺伝子、およびタンパク質の基礎研究を専門とする、ハイテク・ハイリスクのベンチャー企業として誕生した。現在では、新興企業というより、むしろ安定した地位を確立した大手企業のような戦略を推し進めることで、バリューチェーンにおけるポジショニングを変えようとしている。
いくつかの大胆な提携を通じて自社の事業の重点をバリューチェーンの下流(消費者サイド)へ移し、さまざまな製品カテゴリーを取り扱っていったのである。同社にとってのゴールは、明日の医薬品業界を支配するプレーヤーとなることである。
創設者でCEO(最高経営責任者)のマーク・レビンに対する今回のインタビューは、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるミレニアムの本社で行われた。医薬品ビジネスの将来に向けたビジョンと、そのなかでミレニアムが果たすべき役割についておおいに語っている。
レビンは、化学と生化学工学の学位を取り、ベンチャー・キャピタリストとしての顔を併せ持っている。同社がテクノロジーにおけるパイオニアとしての能力をテコにして、いかにバリューチェーンの下流まで触手を伸ばしていったかを説明してくれた。
長期的な戦略と短期的な戦術のバランスを保ちながら進める積極経営は、業界を問うことなく、混乱に直面している経営者にとって貴重な教訓となるだろう。