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「キニスセティック・コネクション」を形成する
マネジメントに携わる人たちは、想像以上に多くの時間をスピーチやプレゼンテーションに費やしている。しかし、これらが好きだという人は稀だろう。〈パワーポイント〉で何時間もかけてスライドを作成する作業の退屈さを考えれば当然である。
また、それらを聞くのが好きだという人はもっと少ないはずだ。長々とスピーチを読み上げられ、スライドについて事細かに説明されるのはまさに拷問である。そのくせ、実務に役立つようなことは何一つなかったりする。
相手が同僚であれ、部下であれ、はたまたクライアントであれ、プレゼンテーションは何とも非効率的なコミュニケーション活動である。この事実は数々の調査によって実証済みである。結局、右から左へと聞き手の耳を素通りしているにすぎない。にもかかわらず、プレゼンテーションはなくならない。なぜだろう。
それは、効果的なコミュニケーションであれば──子細な情報まで伝えるのは無理としても──聞き手の心に強烈なインパクトを与えることができるからである。
そこには、相手の信頼を勝ち取り、実際の行動を促し、その結果、組織の洞察力を刺激し、変革を引き起こす可能性が秘められている。また個人のレベルでは、聞く者の心を動かす能力はマネジャーのキャリアにとっても大変役に立つ。
ところが残念なことに、相手が大人数の聴衆であれ、会議室に座る数人であれ、スピーチやプレゼンテーションの効用を十分活かし切れないマネジャーが何と多いことか。その理由は単純だが、一見わかりにくい。
私は、17年間にわたってプレゼンテーションに関するコンサルティングを数百人というシニア・マネジャーに提供してきた。その経験から申し上げれば、信頼を得、実際の行動を促すうえで不可欠な「強固な連携」──直観的なものにしろ、個人的なものにしろ、あるいは情緒的なものにしろ──を聞き手との間に形成できない話し手がほとんどである。
文化水準の向上に伴い、聞き手がプレゼンテーションにおいて何らかの連帯感を話し手に期待する傾向が強まりつつある。近年、くだけたスタイルで飽きさせない工夫が見られるものの、聞き手の本当の欲求が満たされることはまずない。
聞き手との強固な連携こそ、私が唱える「キニスセティック・コネクション」(kinesthetic connection:話し手が身振りや手振り、表情など、さまざまな動作を通じて、自身の主張や視点を聞き手の感覚や感情に伝達・訴求すること)にほかならない。
相手の興味を引く印象的な話を織り交ぜたり、話し方に変化をつけたりして、相手の聴覚に訴え、聞き手と何らかのつながりを築こうという努力も各所で見られる。