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「影の交渉」が成否を左右する
かつて交渉といえば、その術に長けた者に委ねられるのが一般的だった。ところが現在、ビジネス交渉は「科学」と見るのが主流である。交渉の結果、大なり小なり当事者全員に勝利がもたらされるよう創造的なアプローチが求められているからだ。
実際、企業の意思決定者たちを見ると、「合意の獲得」(getting to yes)に長けつつある[注]。とはいえ、交渉の途中で話が立ち往生したり、最悪決裂したりする場合もある。これはいったいどうしたことだろうか。
そこで我々は、最近の調査にその答えを探ってみた。すると、交渉の前段階で、さらに交渉開始後も、当事者間で取り交わされる複雑かつ微妙な駆け引きにカギがあった。このような駆け引きを「影の交渉」(shadow negotiation)と呼ぼう。
影の交渉では、「何」を議論の対象とするかではなく、「いかに」議論を進めていくかが決められる。具体的には、次のような点が考慮される傾向がある。
・だれの利益が優先されるのか
・話し合いの雰囲気は、反発ムードか、それとも友好ムードか
・だれの意見ならば通るのか
いずれにしても、簡潔に表現すれば、「交渉者はいかに相手と向き合うか」である。
当事者の力関係がどちらかに傾いている場合、とりわけ影の交渉が顕著となる。
たとえば、部下が上司に追加資料を依頼する、あるいは伝統的企業にあって新入社員が方針をめぐり、ベテラン社員にかけ合うといった場面を想像していただきたい。同様に、マネジャーが人種や年齢、性別等の理由から組織内の少数派である場合なども考えられるが、いずれも影の交渉では不利になりがちである。