サマリー:サステナビリティ対策が重要な経営課題となる一方で、企業としての収益性確保とのトレードオフに悩む経営者は多い。両者のバランスを取った持続的成長のカギとなる「ホリスティックアプローチ」「システミックアプロ... もっと見るーチ」とは。 閉じる

サステナビリティ対策が重要な経営課題となる一方で、企業としての収益性確保とのトレードオフに悩む経営者は多い。企業はいかに両者のバランスを取って持続的成長を実現すべきなのか。『サステナビリティ新時代 成果を生み出すホリスティック×システミックアプローチ』(ダイヤモンド社)を2025年7月に刊行したPwC Japanグループの執筆者3人が、変革の具体的方法論を語る。

実践的な取り組みが求められる時代へ

――ここ数年、日本企業でもサステナビリティの取り組みが進んでいます。しかし最近、米国のパリ協定離脱通告をはじめとして、そうした流れに逆行する動きが目立っています。サステナビリティをめぐる昨今の状況をどう捉えていますか。

中島 パリ協定採択から10年が経過した現在、サステナビリティは転換期にあると見ています。その間、脱炭素や気候変動に対応するさまざまな社会的な取り組みが進み、枠組みや法制度の整備も大きく進展しました。

 2024年、そうした動きが欧州の産業競争力を低下させる可能性を指摘した「ドラギレポート」が発表され、くすぶり続けていたサステナビリティへの懸念が表面化しました。米国のパリ協定離脱通告に関しては、欧州基点の枠組みが「エネルギー資源国米国」にとってベストではないと、トランプ政権が判断したのだと理解しています。

PwCコンサルティング
執行役員 パートナー
中島崇文

 とはいえ、取り組みが遅れれば、企業は将来的なコスト増に直面します。その意味では、ただ理想を追うのでなく、具体的かつ実践的な取り組みが求められる時代になってきたというのが、より的確な現状認識だと思います。サステナビリティの実現というベクトルは、今後も変わらないでしょう。

――環境・社会の持続可能性を実現しながら、企業が長期的に成長していくには、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が必要と御社は提唱されています。SXとは、どのようなものなのでしょうか。

中島 SXは、経済価値と社会・環境価値を両立させながら変革を進め、双方の持続的成長を目指す取り組みです。たとえば、企業の温室効果ガス排出によって環境が悪化すると、めぐりめぐって企業運営にネガティブなインパクトを及ぼします。気候変動による豪雨で工場が水没する、といったケースです。そうした事態を避けるための取り組みがSXであり、そこには必ず経済合理性がなければなりません。