経営の変革を促す「AIとデータ」の力

菊地 JPXさんの変革を支えるうえで、やはり、ITというテクノロジーの活用は重要な要素でしたか。

田倉 おっしゃる通り。データのクラウドへの移行や、構造化データと非構造化データを一つにまとめるなど、さまざまな切り口でのデータの活用と提供を可能にするには最新のテクノロジーが必要です。

 長年、経営基幹業務においては、SCSKさんのERP「PROACTIVE」を活用していますが、2024年にはリブランディングされたAIネイティブな次世代型ERP「PROACTIVE」への移行を進めています。ここでは、蓄積されたデータとAIの掛け合わせによって「リアルタイムな経営情報を可視化できる」という効果には大いに期待しています。

菊地 ありがとうございます。従来のERPは、会計、人事給与、販売管理といった企業活動に関するデータを統合して管理するという発想の下につくられていました。しかし、蓄積されたデータを活用しきれていないというケースもありました。データがあって、可視化もできるが、さまざまなメッシュで組み合わせて経営施策に活用するには、いわゆる「スーパーExcel職人」のような専門家の手を借りる必要がありました。

 これは本当のデータの活用にはなっていないですし、データを加工・分析する間に、情報はどんどん古くなり、リアルタイムな経営判断にはつながりにくいという課題があったのです。

 SCSKでは、そうした課題を打破するために、昨年、長年培ってきた自社の知的財産である「ProActive」「atWill」「PImacs」を統合し、新生「PROACTIVE」として、大きくリブランディングしました。この「PROACTIVE」は、AIネイティブなERPを核に、社内外の膨大な情報を統合・分析し、「次に打つべき一手」につながる質の高い「示唆」を導き出します。これにより、お客様は、煩雑な分析から解放され、データが示す客観的な選択肢をもとに戦略を練るという、本来の役割に集中できます。

 具体的には、ERP内に蓄積された社内データだけでなく、市場環境、生産状況、原材料の市況、天候といったあらゆる外部データともリアルタイムで掛け合わせることが可能です。

田倉 そもそも1カ月遅れのデータでは、経営も迅速なアクションが取れません。「PROACTIVE」への移行は、JPXにとって変革を推進するための重要な基盤になります。

菊地 私たちの強みはさまざまなお客様との開発・導入・運用を通じて得られた実践的なノウハウです。これらは単なる業務知識ではなく貴重な知的財産です。この知的財産を、具体的な「業務・業界特化型オファリングサービス」として体系化し、お客様に提供しています。

 たとえば、お客様の業務要件を分析できるような業務特化型のデータや、お客様の業界ごとに必要とされるデータを、私たちのほうでも準備しますし、外部からも取り込んでもらえる仕組みを準備しています。これによりさらなる経営判断の高度化や業務の効率化が実現できます。

変革のカギは「経営のコミットメント」と「新しい価値創造」

菊地 先ほどもお話ししましたが、JPXさんの変革のきっかけと同様、私どもの事業本部も、これまでの約30年間、「変わらないことが正義」という価値観や思い込みに陥っていた部分がありました。しかし、ここへ来て、私は経営トップから「とにかく、この30年間をすべてぶっ壊すつもりで、大胆に取り組んでくれ」と命じられ、昨年はかなり大きな決断もしました。

 これは、あえて「技術負債」と「文化負債」を捨てて、新しいことにチャレンジするためです。この経験を通じて、社員の思考の硬直化が解け、「このままではいけない」と潜在的に感じていた人たちが、自発的に新しい技術や取り組みを始める文化が生まれました。

 また、もう一つ、JPXさんの取り組みとSCSKの改革には共通点があります。それは「経営のコミットメント」と、それを組織全体に浸透させるためのトップみずからの行動が重要ということです。JPXさんは変革を加速させるために「AI推進委員会」を立ち上げるなど、AIの活用にも熱心な企業として知られています。その「AI推進委員会」には、CEOがみずからトップとして率先して参加されていると聞いております。これは素晴らしいエピソードだと思います。

田倉 そもそも変革とは、単にオペレーションが変わっただけで終わらせてはいけないということです。単に業務の効率化とか自動化ということだけじゃなくということですね。そこに「新しい価値」が生まれることを目標にしないと、本当の意味で成功したとはいえないだろうと思います。

菊地 まったく同感です。たとえば、私たちの事業においても、単にERPの機能が便利になったり、UI(User Interface)が改善され使いやすくなるだけでは不十分で、お客様と一緒に新しい価値をつくれたという実感がなければなりません。だからこそ、PROACTIVEのミッションとして、「ビジネスを動かす一歩を、共に創る」を掲げています。データとテクノロジーを駆使して経営資源を最大限に活かした意思決定を後押しすることで、お客様の変革に寄り添っていきたいのです。

 そして、変革を本当に成功させるには、経営層が危機感を持ってみずから発信し行動することが不可欠だと思います。その姿勢が組織に浸透し、社員の共感と自発的な挑戦を生み出すことで、硬直化を打破する推進力となります。それは単なる持続的成長に留まらず、企業が常にチャレンジを続けていく力の源泉になるはずです。

 私たちSCSKも、PROACTIVEという製品に限らず、人材面でもテクノロジー面でもいろいろな挑戦を重ねていきたいと考えています。

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