サンはeビジネスにポートフォリオを導入した

 3年前、サン・マイクロシステムズ(以下サン)は、すべての事業をインターネットで展開することを決定した。しかし、大きな障害に突き当たる。

 同社では、7つのビジネスユニットで、100以上ものeプロジェクトが同時進行していた。

 たとえば、オンライン・ショップでは、ソフトウエア、〈Java〉関連、教育関係、サービス、そして追加部品と、5つのサイトがあった。各サイトとも別々のシステムで運営されており、コンテンツやデザインの方針も異なれば、登録方法、検索エンジン、およびナビゲーションのプロトコルも違っていた。

 さまざまなプロジェクトが調整されないまま進行していたため、顧客たちは混乱した。従業員のイライラも募り、投資も無駄になった。なかでも最大級の打撃は、これがボトルネックとなって統一的な戦略を展開できなかったことである。

 さっそく対応策が講じられた。社長兼COO(最高執行責任者)であるエド・ザンダーはインターネットに関する全社目標を発表し、目標の達成度が管理職の給与にはっきりと反映されるようにした。

 また、事業ユニットを整理・統合し、オンライン関係の予算を一元化した。また、「eサン」という部門を新設し、全社のeビジネスのポートフォリオを管理させた。eサンの最初の任務は、プロジェクトすべてを網羅した一覧表を作成した後、さまざまな基準を設けて、それに基づいて評価することだった。その基準には、定量的と定性的の両方があった。

(1)定量的な項目
・価値創造の可能性
・販売のサイクル・タイム
・人的資源の必要性

(2)定性的な項目
・企業文化や価値観との調和

 この分析に従って、同社はすぐさまe関連業務に大鉈をふるい、そのいくつかを即刻中止した。残ったプロジェクトについては再設計し、多くのプロジェクトが統合された。その結果、15のプロジェクトから成るビジネス・ポートフォリオが出来上がった。これはしかるべき統一が図られ、また十分に目が行き届くものだった。

 この新戦略が功を奏して、現在、サンのe戦略は順調に進んでいる。2000年末のウェブからの売上げは前年の10倍にまで伸び、サイト訪問者の90%はオンラインから得た情報で購入を決めている。