-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
インターネットの本質を見極めよ
インターネットはとてつもなく重要な新技術であり、起業家や経営トップ、投資家、ビジネス評論家から、かくも大きな注目を集めるのも、驚くには及ばない。世間の熱狂に煽られて、「インターネットはすべてを変え、企業や競争に関する古臭いルールはすべて時代遅れになる」と思い込んでいる人も多い。
これが自然な反応なのかもしれないが、実は危険である。このような思い込みのせいで、ドットコム企業も既存企業も区別なく、多くの企業が誤った判断を下している。つまり、自社が属する産業の魅力を損ない、自らの競争優位を曇らせてしまうような判断だ。
たとえば、一部の企業はインターネット技術を活用することによって、品質や仕様、サービスで勝負するのではなく、低価格を追求する競争へと移行してしまい、その産業全体において利益創造が難しくなってしまった。また、見当違いのパートナーシップやアウトソーシングを急いだせいで、大切な独自の競争優位を失ってしまった企業もある。
最近まで、このような行動による悪影響は市場からの歪んだシグナルのせいでかき消されていたが、もはや、その結果は明白になりつつある。
いまや、インターネットについて、明確な展望を持つべき時が来た。私たちは「インターネット産業」「eビジネス戦略」、あるいは「ニュー・エコノミー」といった美辞麗句に耳をふさぎ、インターネットについて「その本質は何か」という観点から眺める必要がある。
インターネットは補完手段である
インターネットの本質とは、イネーブリング(ある物事を可能にする手段としての)技術である。つまり、ほぼすべての産業で、いかなる戦略にも(巧拙は別として)活用できる強力な道具である。そして、私たちに必要なのは、次のような根本的な問いかけだ。
「インターネットが創出する経済的メリットを享受するのはだれなのか」「インターネットが生み出した価値はすべて顧客に還元されるのか、それとも企業もその一部にあずかれるのか」「インターネットは産業構造にどのような影響をもたらすのか」「インターネットはプロフィット・プール(バリューチェーン上の各セグメントが生み出す利益の総和)を拡大するのか縮小するのか」「インターネットは企業戦略にどのような影響を与えるか」「インターネットは、持続可能な競争優位を獲得する能力を強化するのか、逆に弱めてしまうのか」──。
このような問いかけに答えるうえで、私たちが目の当たりにする現実の多くはあまりに曖昧模糊としている。
私は、「インターネットに関して企業がこれまで味わってきた体験は、かなりの程度、割り引いて考えなければならない」、あるいは「これまで学んできた教訓の多くは忘れる必要がある」と考えている。そのような新鮮な目で眺めてみると、インターネットは必ずしも天の恵みのようにありがたいものではないことが明らかになる。
インターネットは、全体としての収益性を悪化させる方向で産業構造を変えてしまいがちである。また、ビジネス手法を均一化してしまい、企業がオペレーションの点で持続的優位を確立する能力を低下させてしまう。



