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競争優位を持続させることは、長年にわたって戦略的マネジメントの「究極の目標」であった。
持続的競争優位を実現させたマネジャーは昇進し、それを実現させる能力を持ちえたコンサルタントは企業に高額で雇われる。そして、その手法や事例を解説した論文は大勢の人々が競って読む。
だれもが持続的競争優位を達成するノウハウそのもの、あるいはそれを理解している人間を知りたがっているようだ。
競争優位を長期に維持できる企業が最終的に市場の覇権を握り、競合他社よりも優位に立てることは、データからも確実に読み取れる。
ある研究では、競争優位を長期に維持している企業10社と、その有力なライバル企業10社を調査対象に選出した。各社の創造した長期株主価値を分析したところ、前者は後者を平均で約440億ドル上回っていた[注1]。
これらはすべて過去の話にすぎないのだろうか。
一部の経済評論家がこのような競争優位の考え方をかつて提唱していたが、一般に、ニュー・エコノミーでは状況の変化があまりにも速いため、持続的競争優位の達成など、もはや夢物語と言われる。このような環境下では、競争優位を実現したとしても短期間で消え去ってしまう、幻のようなものだと言うのだ。
かつてある著名な経済学者が「創造的破壊の嵐」(the gale of creative destruction)という言葉を使った。もちろん、ジョゼフ・シュンペーターである。彼が不断のイノベーションと企業家精神の重要性について見解を述べたのは、ニュー・エコノミーに関する議論が始まる半世紀以上も前のことである。
この言葉はまさに今日の状況を表しているが、一部の企業では、マネジャーに持続的競争優位の追求を諦めさせるとすら予想されている。
しかし、このような見方は誤りであろう。不可能どころか、ニュー・エコノミーにおいても、持続的競争優位の達成は可能である。



