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オールド・エコノミー企業のリインベンション
グレッグ・サミーは、1998年にパーキンエルマーの前身であるEG&Gに迎えられた。当時の同社の状況を一言で言うなら、それは「カウチポテト」であった。
つまり、他のハイテク企業が新たな高みへと駆け上がるのを横目で見ながら、EG&Gは古びた安楽椅子に腰を落ち着けてザッピング(特定の番組を観ることなく、あちこちチャンネルを変えること)をしているようだったのだ──「いったい全体みんな何を騒いでいるんだろう」と時々面倒くさそうにいぶかしがりながら。
47年にマサチューセッツ工科大学の3人の教授によって設立されたEG&Gは、50年間で90もの買収を行った挙げ句、行きすぎた多角化のおかげで混乱しかかっていた。
当時の事業と言えば、海軍の原子力潜水艦向けプログラム・マネジメント、ユタ州にある陸軍の化学兵器備蓄品の焼却処理といった、アメリカ政府向けのテクニカル・サービスがほとんどで、いずれも利益率は低かった。
EG&Gにとっては、過去の栄光の重しを振り落とし、かつては同社のかけがえのない武器であった技術革新力を取り戻すことが緊急の課題となっていた。
当初は社長兼COO(最高執行責任者)として、1年後には会長兼CEO(最高経営責任者)に就任したサミーの任務ははっきりしていた。会社の徹底的な改革、つまり「リインベンション」(reinvention)である。
サミーはマッキンゼー・アンド・カンパニー出身。ゼネラル・エレクトリック(以下GE)とアライドシグナルに長く勤務し、航空機、産業機械部門のトップを務めた経歴の持ち主だ。
現在43歳の彼は、冷静な合理主義者であり、また訓練を積んだプロの経営者であると同時に、昼食時にはぶらぶらカフェへ向かうよりも、ひとっ走りしたがるような精力的な人物でもある。彼のエネルギーと明快な目的意識は、EG&Gの行き当たりばったりの企業風土とは、まさに好対照をなしていた。
それからわずか2年半後、いまやサミーが率いるのは人気企業である。社名をEG&Gからパーキンエルマーに改めただけでない。腰の重いオールド・エコノミー企業から、もてはやされるハイテク企業へと変身させたのである。
同社は10の事業から撤廃する一方、新たに7社を買収し、4つの継続事業を明確に区分・再編した。いまのところ、滑り出しは好調である。パーキンエルマーの株価はサミーの就任以来4倍に跳ね上がり、営業利益はほぼ倍増している。また買収を除く内部成長率も、ほとんどゼロだったのがいまでは12%近い。



