悪癖を持った人の95%が潜在的Aクラス人材

 業績抜群の「花形社員」なのだが、その性格に難があり、とかくいざこざを起こしがちで、実力を存分に発揮できない。ひいては、せっかくのキャリアも破滅しかねない。このような人と仕事をした経験はないだろうか。

 この手の人はどこの会社にもいるものだ。たとえば、いつも仕事を抱えすぎてしまう人。たいていのプロジェクトには関係各位のコンセンサスが必要であるにもかかわらず、根回しを杓子定規に否定し、軽蔑する人。何らかの改革案が出されると必ず悪い面だけをあげつらう人。こんなタイプが当てはまる。

 我々がインタビューした、ある役員の言葉を借りれば、これらの人々は「5%はガラス玉だが、残り95%は宝石」なのだそうだ。

 ここでは、このような自滅を招く行動パターンを、性格に端を発する根深い欠陥という意味で、「悪癖」(bad habits)と呼ぶこととする。

 ただし、喫煙や爪を噛む癖のような「衝動強迫」(compulsion:不合理、あるいは自らの意思に反した行動をしないではいられない強い衝動)は該当しない。また、たまに同僚をいじめたり、自己不信に悩んだり、自分に厳しすぎたりする人も対象外である。

 もちろん、完璧な人間など存在しないし、人はみな心に潜む悪魔と戦いつつも、時には過ちを犯すものだ。しかし、ここで言う悪癖とは、個々人の気質によって絶えず問題のある行動を起こしてしまう人物に関して説明する場合に用いることとする。

 悪癖は性格の中心部分を成し、これによって日々の行動様式が決まってくる。このような人々は、自分で心の内にガラスの天井を張り、自身の成功や企業に対する貢献に何らかの枠を設けてしまう。これくらいならばかなりましなほうで、最悪の場合、優れた能力を備え、高付加価値を生み出せるにもかかわらず、この悪癖のせいで自分自身のキャリアを台無しにしてしまう。

悪癖の6タイプ

 これらの人々の性格的な欠陥は根深いとはいえ、マネジャーに打つ手が見つからないわけでもない。当の本人自らが悪癖を認識し、矯正するように導く、効果的な方法がある。

 筆者らは約20年間にわたって、ビジネス臨床心理士として、またエグゼクティブの指南役として研究と実践を続けてきた。そして、このようなキャリア上のトラブルにつながる行動パターン、ないしは習癖を12種類に分類した。とりわけ部下の行動が、次の6つのタイプのいずれかに当てはまるようであれば、マネジャーはそのような人々に手を差し伸べる必要がある。

 タイプ(1):ヒーロー
 あまりにも多くのことをこなそうと、常に自分を──そしてその延長線上として部下を──長時間にわたって厳しく酷使する。