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1995年、スコット・ロジックは大学を卒業した。当時の彼は、経営学の学位、クレジットカード1枚、そして「こんなソフトウエア会社をつくろう」というアイデアしか持ち併せていなかった。
そんな彼は、すべての持ち物を愛車のパスファインダーに積み込み、シリコンバレーへと向かった。目的は実力があり、信頼できる人物と巡り合うためだった。
彼が求め描いた人物像は、複雑な戦略立案と資金調達の方法を教えることができ、そのうえゼロから事業を興すにはどうしたらよいのか、心底理解している人で、できれば以前に数十億ドル規模の企業のマネジメントに携わった経験のある人だった。
幸いにも、クラスメートの父親がロジックをスタン・メレスマンに紹介してくれた。彼はシリコン・グラフィックスの要職から退いたばかりの人物であった。
ロジックはコーヒーでも飲みながら2~30分話を聞いてもらいたいと打診すると、メレスマンは快く応じてくれた。話を聞いてメレスマンは、大学を卒業したばかりのこの青年はなかなかおもしろいと思った。この若者には経験も専門性(expertise)もなければ、すぐに開業資金を調達できる見込みもない。それでも人とは違う何かを持っていると見抜いたのだった。
メレスマンはロジックを自分の弟子にすることにした。ロジックには大きな可能性が秘められていると思い、また若者が成功するのを見るのは楽しいからだった。
「彼ならいつかは大きなソフトウエア会社のCEO(最高経営責任者)として成功すると思いました」とメレスマンは当時を回想する。
現在、スコット・ロジックはXマークス・ザ・スポットというドットコム企業のCEOとなっている。しかし、そこに到達するまでにメレスマンの存在は不可欠だったのだろうか。一般的な報道記事を信じる限り、答えは「ノー」である。
マスコミによれば、ひと財産を築くには、優れたアイデア、ひときわクールな技術、ガレージもしくは寮の一部屋があればよい、ということになる。さらに言えば、ブリトー(トウモロコシ粉でできた生地にチーズや肉を詰めて焼いたメキシコ料理)がどっさりあればなおよい。



