*本稿はGEアニュアル・リポートより、1980~96年度については抄録を、97~99年度については全文を掲載している。各事業の呼称等は、99年度に使用されているものに統一している。また、総売上高や純利益等の数字については、会計基準の変更や株式分割などによってさかのぼって修正された数字ではなく、発表当該年度のものを使用している。

1980年度
・カルマ社、インターシル社の買収
・エレクトロニクス研究施設や生産施設へ数億ドルの投資

1981年度
・81年4月、レジナルド H. ジョーンズが会長兼CEOを退任
・エレクトロニクス、コンピュー夕・ソフトウエアの分野で多くの企業を買収
・「意識改革」の徹底

1982年度
・ユタ・インターナショナルを豪州のブロークンヒル・プロプリエタリーへ売却

1983年度
・ビッグ・スリー・インダストリーズと合弁事業を展開
・サービス事業、ハイテク事業の売上比率が大きく伸びる

1984年度
・エムプロイヤーズ・リインシュアランスを買収
・アンガーマン・バス、コヒアレントとアライアンスを結ぶ
・セラミックス事業に参入

1985年度
・RCAとの最終合併契約
・国防省タイムカード・チャージ事件で起訴され、有罪
・上層組織をスリム化

1986年度
・RCAの吸収合併完了・戦略的提携の増加(例:ファナック、PPGインダストリーズ)
・UDFエンジンの飛行テスト成功

1987年度
・仏トムソンの医療診断画像事業をGE家電製品事業と交換することで、メディカルシステム事業を強化
・外資とのアライアンスが功を奏した(例:大型民間用エンジン部門がSNECMAとの提携によってシェアを伸ばす)
・買収が順調に収益を生み出す(例:エムプロイヤーズ・リインシュアランス、NBC)

1988年度
・大型買収(ローパー社、モンゴメリー・ウォードのクレジットカード部門、ボーグ・ワーナー・ケミカルズなど)
・買収後に成功が見込めなくなった、2つのエレクトロニクス関連事業を売却
・英GECとヨーロッパ市場での全面提携を発表
・「ワークアウト」を発案

1989年度
・「ワークアウト」の展開を開始

1990年度
・「スピードの必要性」「境界のない企業」「統合された多様性」「自信」を提唱

1991年度
・ソフトウエアの改革を重視
・株式時価総額でIBMを抜いてアメリカ最大企業に
・ウォルマートをはじめとする多数の企業と「ベスト・プラクティス」を共有

1992年度
・「ワークアウト」実施前と比較して、生産性が2、3倍向上
・小企業精神を取り込む4つの手段「クイック・レスポンス」「コ・ロケーション」「クイック・マーケット・インテリジェンス」「報奨」を打ち出す

1993年度
・3つの経営原則を掲げる:「境界のない行動」「スピード」「ストレッチ」

1994年度
・86年に買収したキダー・ピーポディが、12億ドルに上る損失を計上、また、従業員による架空取引により非継続事業となる

1995年度
・2000年に向けた成長の柱として、「グローバル化」「新製品」「IT」「サービス」「品質」を挙げる

1996年度
・95年に導入したシックス・シグマにより、品質向上に力点を置く
・サービス事業を次なる事業機会と位置づけ、次の世紀に向けて「品質の高い製品の販売も行うグローバルなサービス会社」をビジョンとする

1997年度
・航空機エンジン・サービスをはじめとするサービス事業による利益が2桁成長

1998年度
・東邦生命保険の営業権を取得、GEエジソン生命保険としてスタート
・消費者金融会社レイクを取得

1999年度
・「グローバル化」「シックス・シグマ」「品質」の3つのイニシアティブに加え、eビジネスが登場
・フィナンシャル・タイムズ「世界で最も尊敬される企業」に2年連続選ばれる

2000年度
・2000年11月、GEメディカル・システム社長兼CEOのジェフリー R. イメルトがGEの社長兼次期会長に任命された
・2000年10月、ハネウエルの買収計画を発表
・2000年4月、一株を3株とする株式分割
・フォーチュン「アメリカで最も称賛される企業」に3年連続選ばれる

世界のニーズに対応する事業の創造

1980
GE ANNUAL REPORTS

売上高:2496000万ドル
純利益:15億ドル
1株当たり純利益:6.65ドル

産業界不振のなか、大幅な投資で業績向上

 1980年度のゼネラル・エレクトリック(以下GE)は、アメリカおよび多くの外国市場における景気低迷にもかかわらず、その多様性と財務力とを発揮して、堅調な業績を収めることができました。中略

 重要なことは、GEが新規工場・設備、新技術、新製品開発、新規事業への投資を大幅に増大した年に業績の向上を見た、という事実です。

 アメリカの産業界は現在、海外の競争相手からの激しい攻勢にさらされています。(中略)自己刷新を怠り、古きを廃し新技術を導入することに失敗した企業は、この80年代において深刻な衰退の道をたどることになるでしょう。中略

自己刷新

 中略 当社は現在、(中略)新市場、新技術、新事業の機会を常に追求することを全従業員に呼びかけています。

 この刷新努力は(中略)収益源の変革というかたちで成果を生みつつあります。70年代初頭の当社の収益の80%は、電気・エレクトロニクス製品の製造という、伝統的な事業分野をその源泉としておりました。中略

 今日のGE収益の大半は、人工材料、天然資源、航空宇宙機器、輸送機器、サービスなどの成長事業分野から生まれているのです。しかも、収益の42%は国際事業活動からのもので、10年前のわずか16%に比べると大きな違いです。中略

エレクトロニクス、生産性、エネルギー

 中略 GEでは、マイクロエレクトロニクスとそれに関連する情報応用技術をあらゆる製品、サービス、加工に応用する努力を全社的に推進しています。この全社的な姿勢を具体化するのが、エレクトロニクス研究施設や生産施設の建設・取得のための数億ドルにおよぶ投資です。中略

 また、対話式グラフィックス装置の主要メーカーであるキャルマの買収計画、マイクロエレクトロニック・チップのメーカーであるインターシルの取得は、いずれも新技術をリードしようとするGEの意欲の表れです。中略

 過去10年間にわたり生産性が伸び悩んだアメリカの産業界は、「再工業化」のための大規模な設備投資を行う必要に迫られていますが、GEではすでにその努力が始まっています。中略

 最新式製造システムを開発するための世界規模の研究所としての諸工場と、生産性の飛躍的向上を必要とする顧客企業群の存在を背景として、GEは、未来の自動化生産システムづくりの分野でリーダーとなることを目指しています。中略

 世界が石油というエネルギーへの過度の依存から脱しようと努力するなか、GEの研究陣は、石炭を無公害燃料ガスに転換するシステムのような先端のエネルギー技術の商用化に取り組んでいます。中略

技術革新

 中略 GEは、電気関連事業といった既存の単一分野にのみ携わっている企業ではありません。当社は将来性の高い新たな産業分野にすでに進出しており、ようやく投資家各位の評価を得るに至りました。

 GEは、変革する世界のニーズを予見し、満たしていくための事業を常に創造している企業なのです。以下略

柔弱な経済情勢から抜け出す4つのポジショニング

1981
GE ANNUAL REPORTS

売上高:2724000万ドル
純利益:165000万ドル
1株当たり純利益:7.26ドル

企業の社会への政策と責任は経営の核心そのものである

 前略 1981年業績と同年度末の財務状態は、当社の底力と活力を反映したものとなりました。中略

 昨年4月には、レジナルド H. ジョーンズ氏が8年間務めたGE会長の職から退任しましたが、(中略)我々および産業界への同氏の一つの遺産は、企業経営にとって社会に対する政策と責任は単なる添え物ではなく経営の核心そのものである、という認識のあり方です。中略