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ITによる情報過多が注意力を散漫にする
従業員たちの注意を喚起できなければ、マネジャーはお手上げである。長期的なものであれ、短期的なものであれ、企業目標を達成するためには、従業員をそこに集中させ続けなければならない。
ところが、昨今、注意力散漫気味の人が多い。この理由ははっきりしている。「必要な情報は、すべて即時に入手できるように」というビル・ゲイツの夢が実現したはいいが、どうも行きすぎの状況にあるためだ。
イントラネットから、アプリケーションから、ポータルサイトからと、情報が津波のように押し寄せている。マネジャーが受け取るボイスメールや電子メールは一日平均100件余りにも上るという。
沈着冷静かつ思慮分別のある人でも、これほどの情報が飛び込んできてはたまらない。ましてや多くの組織ではこれまでになく人員にゆとりがない。情報が増える一方、人手は削減され、多くの企業が急激に注意力と集中力の欠けた状態となっているのも当然のことだろう。
ここ数年間、我々は「アテンション・マネジメント」(注意力や集中力の管理)について研究してきた。従来型組織では、従業員たちの注意力をいかに巧みに――逆に稚拙に――管理しているかを調査し、同時にインターネットの世界ではどのような状況にあるのかについても研究した。
アテンション・マネジメントの分析に当たっては、経済、精神生物学(生物学的方法で研究する心理学)、およびテクノロジーの3つの視点に立った。
この調査研究から浮かび上がった、重要なポイントを一つ指摘したい。今日のマネジャーは、従業員の注意力というものにもっと留意しなければならない、ということだ。
なぜなら、注意力については大きく誤解され、その管理方法には誤った点が多いからである。たしかに従業員は手許に届く情報すべてに注意を払っているかもしれない。しかし、その方法はリーダーが望む、あるいは期待するものであることはめったにない。
本稿では、注意力という課題に関して、経済、精神生物学およびIT(情報技術)の視点から取り組む。また、その結果に基づいて、企業で実践できる教訓を明らかにしようと思う。
興味深い発見があった。アテンション・マネジメントは、シナイ山で神から十戒を授かった時のモーゼ、第2次世界大戦中に不利な形勢に陥った時のウィンストン・チャーチルを思い浮かべればわかるとおり、実は数千年にわたって重要な問題だった。



