ベンチャー企業の疑問点を起業家コースラが語る

 言うまでもなく、インターネットの登場によって、起業家にはこれまでにないビジネスチャンスの扉が開かれている。これに乗じて一山当てようという人たちが、狂ったようにその市場へ殺到している。しかし、新興のベンチャー企業が資金を調達し、そこへ参入する方法について、また、その長期的な展望について、いま厳しい疑問が投げかけられている。

 こうした、起業家とその後援者たちの目の前にあるビジネスチャンスとチャレンジを議論するに当たって、ビノッド・コースラほど理想的な人物はいない。

 彼は1980年代初頭に設立されたサン・マイクロシステムズ(以下サン)の共同創始者の一人である[注]。

 また、86年にベンチャー・キャピタル(以下VC)であるクライナー・パーキンズ・コーフィールド・アンド・バイヤース(以下クライナー・パーキンズ)に加わってからは、アマゾン・ドットコム、光ファイバー・ネットワークのジュニパー・ネットワークス(以下ジュニパー)、光通信技術のセレントなどを成功に導いてきた。

 我々は2000年2月にシリコンバレーの中心にあるクライナー・パーキンズのオフィスでコースラと会い、幅広いテーマについてインタビューを行った。

 コースラは、インターネットがビジネスや経済に与える影響、新興ベンチャーの創設と資金調達の現状、起業家として成功する秘訣、クライナー・パーキンズが新しいビジネスのアイデアを資本化する(投資の対象とする)方法について話してくれた。

 ただし、eビジネスへの参入を目論んでいる既存の大企業には、いくつかの警告も発している。

起業家の第1条件とは成功を信じてやまない「愚直さ」である

HBR(以下色文字):サンを創立された20年前と比べて、起業家のKFS(Key Factors for Success:成功要因)に変化はありますか。

コースラ(以下略):変わった面と変わっていない面があります。

 起業家として成功するためには、これまでは、「無邪気さと大胆さとをバランスよく兼ね備えていることが必要である」とされてきましたが、この点は相変わらず同じです。