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従業員は信頼をリーダーはトレーニングを
私がハーレーダビッドソン(以下ハーレー)のオートバイ事業の社長兼COO(最高執行責任者)に就任したのは1987年のことだ。
この頃には「会社を救う」という難事業はすでに終わっていた。7年間に及ぶ苦境を、ハーレーはどうにか乗り切ったのである。
とは言っても、前途洋々にはほど遠い状態だった。「進歩を持続させる」という新たな難題に直面していたからだ。そのために何をするのか。私にとってその答えは──特にリーダーシップに関しては──明白だった。「従業員全員がハーレーの現在と未来に責任を持つ」。我々経営陣にはそのような環境を整えることが求められていたのである。
しかし、ハーレーではそのような取り組みなど自然発生的には生まれてこない。それはよくわかっていた。結局のところ、危機を乗り越えられたのは──大転換が起こる場合、しばしばそうであるように──トップ・マネジメントの手綱さばきにあった。
だがすでに時代は変わっており、経営方針も改めるべき時が来ていた。当時の私は、人材こそが組織の競争優位を持続的に維持する唯一の資源であると考えていた。この信念はいまも変わらない。
トップ・マネジメントが常に株主の利益を念頭に置かなければならないのはもちろんのことだ。その一方で、従業員たちのゆるぎない庇護者となり、彼ら彼女らを組織の前線かつ中枢に位置づけなければならない。
私は、権力を行使するのではなく、共有するよう心がけているが、そのようなリーダーでさえ──また聞き役やチーム・プレーヤーと位置づけられた人にとっても──「命令管理(command and control)型モデル」を皆無に排するのは難しい。この点を全員がよく理解することが肝心だ。
命令管理型モデルに陥りやすいのは、リーダーの仕事というものが、従業員、同僚、社外それぞれの立場からの期待を背負っているからだろう。
こうした期待を撃退し、意思決定とアカウンタビリティ(説明責任)に全員が関与する組織に生まれ変わるためには、従業員の側には信頼が、そしてリーダーの側にはトレーニングが必要である。
上意下達のリーダーシップが必要な状況がある
ハーレーにおける私のキャリアは1981年8月にさかのぼる。このとき私はCFO(最高財務責任者)として加わったのだった。それは13人からなる経営グループが、当時の親会社AMFからLBO(レバレッジド・バイアウト)によって買収したわずか二カ月後のことである。



