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組織の能力を評価する
大企業にとって試練の時代がやってきた。インターネット時代、グローバリゼーション時代が到来する前でさえ、大規模で破壊的な変化に対応するのは決して容易ではなかった。
たとえば何百とあるデパートのなかでディスカウントストアに転身し、上位に入っているのはデイトン・ハドソンたった1社である。ミニコンピュータからパソコン・ビジネスへの転身に成功した企業はゼロだ。医科大学やビジネススクールは、時代が求める医者やマネジャーを育成できるようにカリキュラムを素早く修正しようと懸命に努力しているが、ことごとく失敗に終わっている。こうした例をあげればきりがない。
大企業のマネジャーは、「破壊的変化」が迫ってきていることに気づいているはずである。それならば、変化に対応するための経営資源が欠けているのだろうか。いや、ほとんどの場合、有能な人材を擁し、商品の品揃えも豊富で、技術ノウハウも第一級、そのうえ資金にも余裕がある。
それでは、マネジャーに欠けているのはいったい何か。おそらく、個人の能力に対して慎重に判断するのと同じように、組織の能力について、注意深く考える習慣が欠けているのだ。
優秀なマネジャーの条件の一つは、「適材適所」の人事を行い、人材育成ができることだ。残念なことに現状では、個々の業務に適した人材を配置すればプロジェクトに適した組織になると信じている。しかしそれはたんなる思い込みに過ぎない。
同じくらい有能な人材グループを別々の組織で働かせたとしよう。能力は同程度であるのに、その成果に大きな差が出る場合がある。その原因は、「組織自体にも能力がある」ということにある。
組織の能力は、メンバーの資質やその他の経営資源とは別個のものである。企業を継続的に成功させていくためには、人材評価だけではなく、組織全体で、何ができ、何ができないかという能力を評価する必要がある。
本稿では、それぞれの組織が何を達成する能力を備えているかを判断するためのフレームワークを提供する。このフレームワークでは、コア・ケイパビリティ(中核能力)が高まるのに反して、組織全体の能力が失われていく過程を示す。また、変化の種類を見分ける方法と、それぞれの変化が生み出すチャンスに対して、どのような組織で対応すべきかも分析する。
そして、「キャン・ドゥー」(何でもできる)式のビジネス文化で常識とされていることの多くを覆すような、重要なアドバイスも提示する。
組織が大規模な変化――あるいは破壊的イノベーション――に対応する場合の最悪のアプローチは、現行組織を抜本的に変えてしまうことかもしれない。企業を変身させるつもりが、実は企業を支えていた能力を破壊してしまうこともあるのだ。



