ニュー・エコノミーはまだまだ続く

 おとぎ話に出てくるチキン・ディドルは「空はいつか落ちてくる」と教えられた(1))。アラン・グリーンスパン議長を筆頭とするFRB(連邦準備制度理事会)は、いまにもインフレが鎌首をもたげると思っている。チキン・ディドルとグリーンスパンの共通点は多い。

 まず、理由もなく恐れている。この場合、落ちてくる空とはアメリカ経済の低迷を意味しているが、ありがたいことにアメリカ経済は申し分なく、かつてないほどに素晴らしい。堅調で弾力性に富み、成長を続けている。政府がいらぬ干渉さえしなければ、今後数年間はこの状態が保たれるだろう。

 ニュー・エコノミーは強力だ。あまりに単純な理由ゆえに、その強さが簡単に納得できる。その礎となっているビジネスシステムがうまく機能しているからである。このビジネスシステムは常に非効率を排除すると同時に、知識集約型のビジネスを再構築させ、顧客にほしいものを与える。

 さらに、さまざまな要因がうまくからみ合っていることも、ニュー・エコノミーの強さの一つでもある。かつて経済学者たちはこれらの要因をさほど重要視しなかった。その要因とは、アメリカならではの起業家精神、敗者復活戦の保証、低コストの資金調達である。

 加えて、Aクラスの人材を引きつけていることも挙げられる。かつてMBA取得者たちがコンサルティング会社や投資銀行になだれ込んだ時代があった。しかしいまは、大半が起業家となって、ひたすらシリコンバレーに向かう。そこで、エンジンをかけ、レバーを引き、ニュー・エコノミーを加速させる。

 最後に、ニュー・エコノミーが世界へ拡大していることを挙げておこう。いまはアメリカだけで際立っているが、ここ数年のうちに世界各地で見られるようになる。すなわち、世界中の生産性が向上するはずである。

 勘違いしないでほしい。「ニュー・エコノミーの未来は明るい」と手放しに喜んでいるわけではない。急速に成長したヤフーやマイクロソフトが破産することも考えられなくもない。

 ただし、インターネットや遺伝子組み替えといった新しいテクノロジーのおかげで、アメリカ経済は沸いており、投資対象としても大いに注目されているのは紛うことない事実なのだ。もちろん、投資のかいなく、成果が得られない場合もあるだろう。突然、別の技術に代替される可能性もある。

 しかし、これこそニュー・エコノミーの真の姿なのだ。お決まりの企業ランキングや既存勢力を覆そうと企業同士がしのぎを削り、少しでも新しいテクノロジーを求める。このような企業行動を警戒する必要はない。ニュー・エコノミーを支える経済的・社会的・文化的要因はまだまだ安泰であり、後は政府の介入に気をつける程度だ。