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あなたの組織にシリコンバレー文化を移植せよ
けっして大袈裟ではない。高株価企業といえば、どこの業界でも新興勢力がその名を連ねている。シスコシステムズ、アマゾン・ドット・コム、スターバックス、チャールズ・シュワブ、アメリカ・オンライン(以下AOL)、GAP、MCIワールドコム、デルコンピュータ、サウスウエスト航空、SAPなどなど。
ご存知のとおり、これらの企業は少し前には存在すらしていなかった。それが1999年5月では、これらの発行株式の時価総額が8000億ドルに迫るというのだから、驚きだ。
ここに挙げた企業群が特別な存在かと言うと、けっしてそんなことはない。単に、常識を破壊した新興企業が、ぬるま湯にどっぷり浸かった既存企業に挑戦状を突きつけて、打ち負かしただけだ。
「守りの経営か、攻めの経営か」。並みの企業と革新的な高株価企業を比べて、その違いを一言で表せばこうなる。大奥様が遺した銀食器を執事が丁寧に磨く姿を思い浮かべていただきたい。この比喩が示すように、「守りの経営」を旨とする企業では、創業者が築いた資産やケイパビリティー(実行能力)を、その引退後あるいは死後も、後継者が長く守り続けている。
当然、現経営陣には情熱もイマジネーションもなく、コスト削減や非効率な業務プロセスのアウトソーシング、自社株の買い戻し、不採算事業の売却、高収益事業のスピンアウト(分社化)といった施策に頼って、何とか利益を絞り出そうとしている。
しかし、ニュー・エコノミーの時代の投資家たちはこんな経営者に用はない。彼らが待望しているのは「花形起業家」、つまり新たな価値創造に燃える「イノベーター」(革新者)なのだ。守りの経営はせいぜい現有価値を維持するのが精一杯だが、「攻めの経営」は新しい価値を生み出すからだ。
高い価値を生み出す花形企業になるには、守りから攻めに比重を移す必要がある。守りの経営が悪いと決めつけているわけではない。もちろん、ブランドやスキル、資産、顧客基盤といった繁栄の礎はだれかが守らなければならない。
ただ、いまや企業戦略の寿命は月単位──「10年単位」ではない──にまで短くなっており、守りの経営にどれだけ長けていようとも、明日の企業価値を高められる保証はない。もしそれができたにしても、それだけでは存続すら危うい。
とにかく現実を直視することだ。ヒューレット・パッカードよろしく、どこかのガレージで見知らぬ起業家があなたの会社を一撃でしとめてしまう強力な弾丸を作っている。ひとたび引き金が引かれたら、それに撃たれて死を遂げるだけだ。それを避けるには、自分から攻撃を仕掛けるしかなかろう。言うまでもなく、イノベーターにはより高い革新性で、起業家にはより強い起業家精神で対抗しなければならないわけだ。
何十年もの歴史に縛られた企業には無理な相談かもしれないが、道がないわけでもない。つまり、イノベーションや価値創造に必要だと言われてきた前提を一つ残らず疑ってみるのだ。



