-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
新たな視点を提供するオーガニグラフ
組織に足を踏み入れて内部の様子をじっくり眺めてみよう。あか抜けて整然としたマネジャーのオフィスではなく、工場やデザイン・スタジオ、あるいは営業部門などがよい。ふと見ると、煩わしいロジスティクス上の問題について膝を突き合わせて議論する一団がいる。そうかと思えば別の一角では、インターネットで地球の裏側にいる顧客と何やら交渉している人もいる。どこを見てもヒトやモノがあわただしく行き交っている。実際の企業活動を垣間見るとは、こういうことである。
一方、組織概要を問い合わせると、小さな長方形を整然と積み重ねた組織図を渡されることが多い。だが、組織図を見てわかるのは、せいぜいマネジャーの名前や肩書きぐらいなものである。製品や業務プロセス、顧客についての手掛かりは乏しく、事によると業種すらわからないのではないだろうか。組織図をもとに企業について知ろうとするのは、市役所のお偉方のリストを手に市内を探索するようなものである。
組織図はさも大切なもののように扱われているが、実はそれを見てわかるのは、マネジャーたちが大きな顔をしているということだけである。これでは組織図が役に立たないのも道理ではないか。それでなくとも伝統的なヒエラルキーが崩壊し、これまでには見られなかったような、ややもすると複雑きわまりない組織形態がそれに取って代わっているために、企業における業務の仕組みを理解するのは並大抵のことではなくなってきている。
そこで、次のような点に着目してみてはどうだろうか。そうすれば一人ひとりが組織全体にどうかかわっているのかがわかり、また、競争優位を得るのに役立つ市場機会を数多く見つけ出すこともできるだろう。
・どの部門とどの部門が密接な関係にあるか
・どの業務にどういった人材を充てるべきか
・コミュニケーションの流れはどうあるべきか
この数年間というもの筆者たちは、組織の実体を表現しその理解を促すような新手法を構築しようと模索してきた。そして「組織図」を意味するフランス語であるオーガニグラムからヒントを得て、この新手法を「オーガニグラフ」(organigraph)と名付けた。
オーガニグラフは従来の組織図の形式をすべて否定しているわけではなく、それに加えて今日的な多様な組織のあり方を反映した「ハブ」(中枢、拠点)や「ウェブ」(網状の複雑な関係)といった概念を取り入れている。これは単なる図ではなく〝地図〟の役目も果たし、だれがどの役職に就いているかを示すよりも、むしろ事業活動を俯瞰することに重点を置いている。比喩的に表現すれば、企業の敷地内の山や川、市街地、そしてそれらを結ぶ道路を示しているのだ。
これまでに10社あまりの企業についてオーガニグラフを作成してきた結果、組織の実体、つまりその存在意義や事業内容を表すうえで、これは従来の組織図よりもはるかに有用であるということがわかった。



